下肢非荷重状態が骨盤底筋に与える影響

DOI
  • 藤井 奈美
    公立大学法人県立広島大学保健福祉学部理学療法学科
  • 積山 和加子
    公立大学法人県立広島大学保健福祉学部理学療法学科
  • 金指 美帆
    公立大学法人県立広島大学保健福祉学部理学療法学科
  • 高宮 尚美
    公立大学法人県立広島大学保健福祉学部理学療法学科
  • 梅井 凡子
    公立大学法人県立広島大学保健福祉学部理学療法学科
  • 小野 武也
    公立大学法人県立広島大学保健福祉学部理学療法学科
  • 沖 貞明
    公立大学法人県立広島大学保健福祉学部理学療法学科

書誌事項

タイトル別名
  • ラットによる実験的研究

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>高齢者や女性における尿失禁の罹患率は高く,その原因のひとつとして骨盤底筋群の脆弱化が挙げられる。骨盤底筋群は恥骨から尾骨に向けて広くハンモック状に位置し,重力下で骨盤内臓器を直接受け止め,排尿調節を行っている。高齢者の尿失禁と関連する要因としてせん妄や起立動作能力の低下等が報告されているが,骨盤底筋群の構造や機能からすると安静臥床のような条件においては下肢筋と同様に廃用性筋萎縮が生じる可能性がある。そこで本研究では,下肢非荷重状態が骨盤底筋に与える影響について検討した。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>8週齢のWistar系雌性ラット13匹を対象とし,対照群(以下,C群)6匹と後肢非荷重群(以下,S群)7匹となるよう無作為に2群に分けた。実験初日と実験最終日に各ラットの体重を測定した。C群は14日間通常飼育を行い,S群は14日間尾部懸垂を行った。尾部懸垂はTanakaら(2004)の方法を用い,三種混合麻酔薬を腹腔内投与して尾部基部にはリドカインの皮下注射を施した。その後ラット尾部基部にKirschner鋼線を通してナスカンフックを取り付け,ケージ内に懸垂した。水や固形飼料は両群とも自由に摂取可能な状態で飼育した。</p><p></p><p>実験最終日にペントバルビタールナトリウムを腹腔内に過量投与し安楽死させた後,両側のヒラメ筋を摘出した。本研究では,骨盤底筋群の中から骨盤底において重要な支持組織とされる骨盤隔膜を構成する腸骨尾骨筋を被験筋とした。腸骨尾骨筋の摘出方法については,Bremerらの方法(2003)に基づき,ラットの腸骨から尾骨椎体(C5-6)に向けて腸骨尾骨筋を剖出し,起始部は腸骨付着部で剥離し,停止部は筋腱移行部で切離した。摘出したヒラメ筋と腸骨尾骨筋は精密秤を用いて計測し,これを各ラットの実験最終日の体重で除し,相対重量比を求めた。ヒラメ筋と腸骨尾骨筋の相対重量比について対応のないt検定を行った。危険率5%未満をもって有意性を判定した。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>ヒラメ筋の相対重量比はC群0.490±0.03mg/g,S群0.225±0.017mg/gであった。腸骨尾骨筋の相対重量比はC群0.540±0.057mg/g,S群0.276±0.057mg/gであった。いずれの2群間の比較においてもC群に比べS群が有意に低値を示した(P<0.001)。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>本研究では,ラットの後肢非荷重状態が骨盤底筋に与える影響について検討した。S群のヒラメ筋相対重量比の結果より,先行研究と同様に後肢非荷重状態が作成できたといえる。腸骨尾骨筋についても,S群の相対重量比はC群と比較して有意に低値を示した。今回の研究により,安静臥床を模した下肢非荷重条件下において,腸骨尾骨筋の筋湿重量が減少することが明らかとなった。よって,下肢に対する廃用性筋萎縮予防の運動と同様に骨盤底筋に対する対策を講じる必要があると考えられる。本研究では腸骨尾骨筋の筋湿重量についての検討を行っただけであるため,今後は筋組織や筋機能についても検討を行いたい。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680555056896
  • NII論文ID
    130005609577
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.1510
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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