廃用性筋萎縮に伴う筋線維の速筋化に対する乳酸菌R30株摂取の予防効果

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抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>不活動に伴う骨格筋萎縮では筋線維の速筋化や酸化的エネルギー代謝の低下が生じ,運動耐容能低下が惹起される。筋線維の速筋化や酸化的エネルギー代謝低下には転写共役因子であるPGC-1αの発現量低下が関与している。PGC-1α発現の調節因子として一酸化窒素合成酵素(eNOS)が報告されており,eNOS発現は骨格筋内の血流量増加によって誘導されることが確認されている。我々は先行研究においてラットに乳酸菌R30株(R30)を摂取させることで骨格筋の血流量が増加することを確認している。そこで,長期間のR30摂取は骨格筋の血流量を増加させ,eNOSを介しPGC-1α発現を誘導して,骨格筋線維の速筋化や酸化的エネルギー代謝低下を抑制できるのではないかと予測される。本研究ではR30の摂取が不活動に伴う骨格筋の速筋化や酸化的エネルギー代謝に与える効果を検証した。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>11週齢Sprague-Dawley雄性ラットを15匹用いて,対象群(CON,n=5)と後肢非荷重群(HU,n=5),後肢非荷重+R30摂取群(HU+R30,n=5)の3群に分類した。R30は生理食塩水に溶解し,500 mg/kg/dayを経口摂取させた。1週間のプレ投与の後に2週間の後肢懸垂を行い,後肢懸垂期間中も摂取させた。CON群及びHU群には同量の生理食塩水を摂取させた。実験期間終了後,ヒラメ筋を摘出し,急速凍結した。凍結した筋はクリオスタットを用いて薄切切片を作製し,ATPase染色した。光学顕微鏡で筋線維タイプを分類し,タイプI線維の割合を算出した。また,酸化的エネルギー代謝の評価としてクエン酸合成酵素(CS)活性を測定した。さらにeNOSとPGC-1αのタンパク発現量をWestern Blot法で測定した。統計処理は一元配置分散分析とTukey-Kramerの多重比較検定を用い,有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>タイプI線維の割合は,HU群及びHU+R30ではCON群と比較して有意に低値を示したが,HU+R30群ではHU群と比較して有意に高値を示した。CS活性は,HU群ではCON群と比較して有意に低値を示したが,HU+R30群ではCON群と比較して有意な差を認めなかった。また,eNOSの発現量は,HU+R30群ではHU群に比較して有意に高値を示した。さらにPGC-1α発現は,HU群ではCON群と比較して有意に低値を示したが,HU+R30群ではHU群と比較して有意に高値を示した。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>乳酸菌R30株摂取により,骨格筋内のeNOS,PGC-1α発現量が増加し,不活動による骨格筋の速筋化,酸化的エネルギー代謝を予防することが明らかとなった。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680555095552
  • NII論文ID
    130005608520
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0471
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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