廃用性筋萎縮に対する再荷重の影響の検討―微細筋損傷とIL-6,IL-15に着目して―

DOI
  • 相原 正博
    帝京科学大学医療科学部理学療法学科 国際医療福祉大学大学院保健医療学理学療法学分野
  • 勝田 若奈
    帝京科学大学大学院理工学研究科バイオサイエンス専攻医療科学分野 国立精神・神経医療研究センター病院身体リハビリテーション部
  • 廣瀬 昇
    帝京科学大学医療科学部理学療法学科 帝京大学神経内科
  • 斉藤 史明
    帝京大学神経内科
  • 丸山 仁司
    国際医療福祉大学大学院保健医療学理学療法学分野
  • 萩原 宏毅
    帝京科学大学医療科学部理学療法学科 帝京科学大学大学院理工学研究科バイオサイエンス専攻医療科学分野 帝京大学神経内科

抄録

<p>【はじめに,目的】廃用性筋萎縮は筋の不活動により生じ,高齢者においては寝たきりやADLの低下を引き起こす要因の一つである。そのため,廃用性筋萎縮の予防や機能改善が重要な課題である。廃用性筋萎縮に対する理学療法介入は,伸張刺激や持久運動,電気刺激等と数多くの報告がなされている。一方で,筋萎縮に対する再荷重は,骨格筋の微細筋損傷を誘発することが報告されており,筋萎縮を増悪させる可能性もある。このため,至適な再荷重の負荷を行うことが重要である。しかし,至適な負荷について有用な指標が存在していない。近年,骨格筋から種々のホルモン様の生理活性物質として分泌されるマイオカインが注目されている。特に,骨格筋から分泌されるマイオカインのうちIL-6やIL-15などは,運動時における生理学的機能に関する報告が多い。しかし,筋萎縮に対する再荷重の影響と関連するかは,ほとんど検討がなされていない。そこで,廃用性筋萎縮に対する再荷重による微細筋損傷の有無とIL-6,IL-15の変動について検討した。</p><p></p><p></p><p>【方法】10週齢のマウス(C57BL6)を使用し,コントロール群,ギプス固定群,再荷重群に分けた。筋萎縮誘発方法は,膝関節伸展,足関節背屈位にてギプス包帯を用いてギプス固定を実施し,固定期間は2週間とした。前肢と一側後肢を用いてケージ内を移動し,餌と水は自由に摂取できるようにした。飼育中は,全身状態観察,体重計測を実施し,ギプス固定の緩みや浮腫が生じた際は,その都度巻き直しを行った。2週間の固定期間後,ギプス包帯を除去し,再荷重を1日行った。前脛骨筋,腓腹筋,ヒラメ筋を単離した後,筋湿重量計測を実施し,凍結横断切片を作成した。HE染色にて,微細筋損傷でみられる炎症細胞,壊死線維,間質の拡大,中心核の有無を観察した。また,マイクロアレイ法にて,遺伝子の発現を網羅的に検討した。また,採血後に血清を得て,IL-6,IL-15の血中濃度をマルチプレックスサスペンションアレイ解析にて定量化した。</p><p></p><p></p><p>【結果】筋湿重量はコントロール群と比較して,ギプス固定群と再荷重群で有意に低下した。再荷重群では明白な筋萎縮の改善はみられなかった。微細筋損傷は,腓腹筋のHE染色では明らかではなかった。骨格筋のマイクロアレイ法では,コントロールと比較してIL-6が約20倍に発現が上昇し,IL-15は再荷重時に0.5倍に発現量が減少していた。血清でのIL-6,IL-15はコントロール群,再荷重群,ギプス固定群の順に高値を示した。</p><p></p><p></p><p>【結論】血中濃度やマイクロアレイ解析の結果から,IL-6やIL-15は筋萎縮誘発や再荷重のプロセスにおける病態を反映し,バイオマーカーとなりうる可能性が示唆された。微細筋損傷は再荷重1日の腓腹筋では明らかではなかった。今後は再荷重期間の延長や微細筋損傷を受けやすい抗重力筋であるヒラメ筋等を対象とした,微細筋損傷の評価について検討が必要である。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680555223552
  • NII論文ID
    130005608556
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0463
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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