脳卒中片麻痺者における直線歩行と方向転換動作の変動性

Description

【はじめに,目的】脳卒中片麻痺者は疾患に起因する機能障害や姿勢制御系の障害により不規則な歩行パタンを呈し,歩行変動性が増大することが示されている。また方向転換動作は日常生活上で頻回に必要とされ,脳卒中者において転倒リスクの高い動作であるが,未だに不明な点が多いとされている。直線歩行中の変動性について,変動性の増大と転倒の関連は示唆されているが,方向転換動作における変動性や両動作の関連性は明らかになっていない。そこで,本研究では直線歩行と方向転換動作の変動性の違いを明らかにすることを目的とした。【方法】対象は回復期病棟入院中の脳卒中片麻痺患者5名(年齢71.0±8.1歳,発症54.0±18.4日目,右片麻痺4名,左片麻痺1名,Berg Balance Scale52.6±3.2点,10m歩行速度1.1±0.3m/sec)とした。取り込み基準は補装具を用いずに10m以上独歩が可能であるものとし,高次脳機能障害または認知機能の低下により課題遂行が困難なものは除外した。課題は5m程度の定常歩行後,方向転換指示装置(イリコス社)により矢印ランプで転換方向を提示し,その方向に左右90°方向転換するものとした。転換方向の提示は左右どちらかの踵接地のタイミングとした。提示のタイミングと転換方向の4パタンの組み合わせをランダムに3施行,計12回実施した。そのうち,今回は麻痺側踵接地での提示と麻痺側への方向転換の組み合わせを解析した。慣性センサ(ATR-Promotions;TSND121)を第3腰椎付近に貼付して計測を行った。慣性データのサンプリング周波数は100Hzとし,移動平均法(10区間)を用いて処理した。直線歩行の変動性の指標として方向転換前の歩行の中央3歩行周期分の加速度波形を1歩行周期分シフトした波形との自己相関係数(AC)を算出した。方向転換時の変動性の指標として3施行のうち後半の2施行の腰部回旋開始から1秒間の加速度波形の相関係数(R)を算出した。統計学的解析として,ACとRの3軸方向(前後,内外側,鉛直)での比較をt検定またはWilcoxonの順位和検定を用いて行った。統計処理はR2.8.1を使用し,有意水準は5%未満とした。【結果】前後,内外側,鉛直のACは0.73±0.11,0.67±0.18,0.79±0.14,Rは0.43±0.20,0.31±0.18,0.46±0.38であり,各方向でのACとRの比較では内外側方向にのみ有意差を認めた(P<0.05)。【結論】直線歩行時に比べ方向転換時の身体重心動揺は3軸方向ともに変動性が大きい傾向であったが,内外側において有意に変動性が増加していた。対象者は全員step turnにて方向転換を行っていたが,これは直線歩行とは異なる歩行様式となる。脳卒中者における内外側方向の身体重心の変動性について,直線歩行と方向転換動作では異なる姿勢制御機能を必要とすることが示唆された。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680555395840
  • NII Article ID
    130005418047
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1105
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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