急性期脳卒中患者におけるNIHSSと転帰先の関連,導入に向けた検討

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【はじめに,目的】National Institute of Health Stroke Scale(以下NIHSS)は,急性期脳卒中患者に対する重症度総合評価スケールとして使用されており,脳卒中治療ガイドライン2015でも推奨されている。近年では国内でのNIHSSの使用頻度も増加傾向にあり,NIHSSと転帰先との関係に対する先行研究も多く見られる。一方で,当院ではまだNIHSSを用いていない。今回,脳卒中急性期患者のNIHSSと転帰先との関連から,在院日数の予測と当院の特性を他施設や全国平均と比較すると同時に,NIHSSの導入を目的とした。【方法】研究デザインは,前向き研究とした。対象は入院時期が平成27年6月から平成27年10月末までの初回発症の脳卒中患者44名(平均年齢69.8歳,男性34名,女性10名)とした。測定項目は,基本的患者属性(年齢,性別,在院日数),診断名,転帰先(自宅,回復期病院),介入初日のNIHSSとした。統計解析は,転帰先である自宅群と回復期群のNIHSSのカットオフ値の算出にReceiver Operating Characteristics曲線(以下ROC曲線)を用いた。介入初日のNIHSSと在院日数との相関についてはSpearmanの順位相関検定を行った。【結果】自宅退院群18名,回復期群26名。平均在院日数は自宅群11.6日,回復期群19.1日。平均NIHSSは自宅群2.4点,回復期群8.3点。自宅群と回復期群のカットオフ値は3.5点。ROC曲線下面積は0.85であった。介入初日のNIHSSと在院日数の間には,順位相関係数r=0.442と正の相関を認めた。【結論】本研究結果より,急性期脳卒中患者に対してNIHSSを用いることで転帰先と在院日数の予測が可能であることが示唆された。急性期病院から自宅へ退院する群のカットオフ値をNIHSS6点と報告している研究が多いが,当院のカットオフ値はNIHSS3.5点であった。また,転帰までの平均在院日数は全国平均より少ない結果となった。その要因として,当院はHigh Care Unit20床を有し,超急性期から集中的なリハビリテーション(以下リハビリ)が可能である。また,当法人が2つの回復期病院を有していることや介入後1週間以内にカンファレンスを行い転帰先の検討を行っているため,平均在院日数の短縮と早期に回復期病院への転院を可能にしていると考える。介入初日のNIHSSと在院日数の順位相関係数が低かった要因として,運動麻痺を認めず高次脳機能障害を重度に認めた場合,在院日数が長期化し回復期病院へ転院となる症例も多く,NIHSSにばらつきがあったと考える。今後NIHSSを導入することにより,転帰先の予測精度の向上,長期目標を見据えたリハビリの提供が可能となると考える。また,医師,看護師,リハビリスタッフとの情報共有が円滑になり,在院日数の把握によりベッド稼働率を引き上げられる可能性があると考える。今回はNIHSSのみ使用した転帰先の検討を行ったが,多面的な視点での評価と経時的なスコアの検討も必要と考える。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680555442560
  • NII Article ID
    130005418084
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1086
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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