歩行路の壁幅の違いによるパーキンソン病患者の歩行特性

  • 山田 一貫
    社会医療法人祐生会みどりヶ丘病院 神戸大学大学院人間発達環境学研究科
  • 国宗 翔
    社会医療法人祐生会みどりヶ丘病院 神戸大学大学院人間発達環境学研究科
  • 眞砂 望
    社会医療法人祐生会みどりヶ丘病院
  • 岡田 修一
    神戸大学大学院人間発達環境学研究科

Bibliographic Information

Other Title
  • 加速度計による健常高齢者との比較

Description

<p>【はじめに,目的】パーキンソン病(以下PD)患者の転倒の原因として近年,すくみ足(以下FOG)の発生が取り上げられている。罹病期間が10年以上の患者の約50%,重症度の高い患者の多数がFOGを経験(Okuma,2006)している。近年小型加速度計による歩行分析の有用性が検討され,FOGの評価としてFreeze index(以下FI)が用いられており,前回大会でその特徴を報告した。本研究では,歩行路の壁幅の違いによるFIの特性からPD患者のFOG発生の危険性を明らかにし,転倒予防の一助とすることを目的とする。</p><p></p><p>【方法】対象は,地域在住の健常高齢者10名(以下HC群,71.3±3.6歳)と当院神経内科に通院している特発性のPD患者10名(以下PD群,74.4±4.7歳)とした。歩行方法は,快適歩行速度にて,壁の無い場所から歩行を開始し,歩行開始地点から4m前方に平行に設置した長さ2.4mの壁の間を通り抜け,その後4m歩行する課題とした。壁幅の条件は,壁の設定の無い条件(以下壁無),壁幅120cmの広い条件(以下壁広),壁幅75cmの狭い条件(以下壁狭)の3条件とした。加速度評価は3軸加速度計(Microstone社製)を足関節外果直上に固定し,加速度波形をサンプリング周波数100Hzにて導出した。測定は各条件6回行い,その平均値を代表値とした。解析は,Moore(2008)の実験を参考に足関節外果直上の加速度計の鉛直成分を用いた。FIは,6秒窓のパワースペクトルの面積の3-8Hzのfreeze bandを0.5-3Hzのlocomotor bandで除し算出した。統計分析には,2元配置分散分析(群×条件)を用い,多重比較としてBonferroniの多重比較検定を用いた。その後,PD群の各参加者の各壁幅の条件におけるFIとUPDRSIIIとの関係をpeasonの相関係数を用いて分析した。いずれも有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p>【結果】今回の実験中ではFOGは見られなかった。FIは,HC群では,壁無0.56±0.12,壁広0.57±0.11,壁狭0.59±0.11,PD群では,壁無0.63±0.32,壁広0.67±0.34,壁狭0.73±0.43であった。FIは,群と条件で交互作用を認め(F(2,216)=6.13,p=.003),多重比較の結果PD群の壁狭においてFIが他の条件よりも有意に増加した(p=.000)。また,UPDRSIIIとFIの壁無では相関関係が認められず(r=.56,p<.09),壁広(r=.64,p<.05)と壁狭(r=.67,p<.03)では有意な正の相関関係が認められた。</p><p></p><p>【結論】実験室では一般的にFOGは起こらないとされているが,FIはFOGと相関がありFIが大きくなることは,PD患者のFOGの検出ができる可能性がある。本研究ではPD群の壁狭で有意にFIが増加したことから,壁のある歩行路を通過する際,壁幅が狭ければ歩行の変動性が増加し,FOGの発生頻度が増加することで転倒の危険性が増加する可能性がある。さらに,UPDRSIIIは歩行速度や方向転換時間などの指標とは相関がなく疾患の重症度を予測できないとされているが,壁広,壁狭のFIとは有意な正の相関を示すことがわかった。このことから,FIのような揺れ方の指標を用いることによって,PDの疾患の運動機能の重症度を予測できる可能性が考えられる。</p>

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680555764224
  • NII Article ID
    130005609076
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0974
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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