下垂足を呈した糖尿病患者に対するフットウェアの工夫

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  • インソール加工の違いが足底圧に与える影響

抄録

【はじめに,目的】糖尿病患者の足病変形成リスクは,末梢神経障害に伴う足底負荷分布異常によって高まると指摘されている。足底負荷量の最適化は靴や装具にインソールを組み合わせて行われることが多いが,靴や装具の形状または経済面の問題から全ての症例でモールドインソール(mold insole)を使用できるわけではない。このような状況では,簡易的に作成できるフラットインソール(flat insole)を活用し対応することとなるが,足底負荷量の軽減には定量的な評価が必要である。今回は下垂足により短下肢装具(SHB)を使用している症例を対象に,インソール着用時の足底負荷量軽減量に関する検討を行った。症例は,85歳女性,糖尿病治療歴22年(Hba1c:6.0%),腎症,神経障害があり,7年前より末梢神経損傷に伴う両側下垂足がみられた。5ヶ月前より慢性硬膜下血腫による右下肢脱力が出現し理学療法目的にて当院入院となった。入院時,足関節背屈・外反運動は不可であり立位時はSHBが必要であった。内反足による外側荷重のため右第5中足骨頭部(Rt-5MTH),右第5中足骨底部(Rt-5MTB),左第5中足骨頭部に胼胝形成を認めた。Rt-5MTBは荷重時痛も認め装具装着拒否および歩行制限要因となっていた。【方法】胼胝形成部位の除圧を目的としたインソールを2種類作製しSHBに組み込んで歩行時の足底負荷量を計測した。インソールは,トリッシャムで採型後作成したmold insoleと,除圧素材をインソール型に切り抜いたflat insoleであった。計測機器は,足底負荷量計測デバイスを使用してRt-5MTHとRt-5MTBにかかる力学的負荷量(垂直成分,水平成分)の計測を行った。歩行開始5歩目以降の8歩行周期のデータを採用し,1歩行周期毎のpeak force(垂直成分)とpeak to peak(前後成分・左右成分)を算出し,インソール非装着時と比較した足底負荷量の軽減率を求めた。【結果】mold insoleは,Rt-5MTHで垂直成分33%,前後成分16%,左右成分15%,Rt-5MTBで垂直成分66%,前後成分79%,左右成分54%の足底負荷量軽減した。flat insoleは,Rt-5MTHで垂直成分12%,左右成分13%,Rt-5MTBで前後成分62%,左右成分28%の足底負荷量軽減した。flat insoleはRt-5MTHの前後成分で32%,Rt-5MTBの垂直成分で24%の足底負荷量が増加した。【結論】下垂足と内反足を呈する本症例では,足底負荷量の軽減率はflat insoleよりmold insoleの方が高いことが明らかとなった。mold insoleの立体的構造は足部の内側縦アーチへの荷重を促し,歩行時のRt-5MTBに対する前後方向への動揺も制限されることから,垂直成分と前後成分の負荷量軽減が得られたと考えられる。flat insoleには,これらの機能が存在しないため足底負荷量の軽減が全体的に不十分であったと推測される。一方で,flat insoleでもRt-5MTBの前後成分の負荷量軽減が得られているため,下垂足と内反足といった運動機能障害を呈さない症例であれば効果が期待できる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680556061440
  • NII論文ID
    130005418517
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1487
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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