温泉環境で生成したストロマトライトと室内生成実験

書誌事項

タイトル別名
  • Characteristics of stromatolite formed under hot spring environments and experiments of formation

説明

温泉環境では、有機物は少なく、高温であったり、極端なpH値、高濃度の無機イオン種、等で、生物にとっては、極限的な環境ということができる。このような極限的な場も含めての微生物-鉱物の相互作用,バイオミネラリゼーション,その地球環境・生物進化へのインパクトが,今,生物学,地球科学,鉱物学,宇宙生物学等々,幅広い境界領域において注目されている(Riding & Awramik, 2000; 赤井 2000等).生物圏は従来考えられてきたよりもずっと広がりをもっているらしいことがわかってきつつあり、生命の起源,地球外生命についての話題へもひろがってきている.生物が影響を及ぼした痕跡は,地質体にはその痕跡が岩石,鉱物となってのこっている場合も多くある.原核生物のシアノバクテリアの生物群集がつくる構造物であるストロマトライトもその代表的なものである.ストロマトライトの定義は,微生物集団が構築する堆積構造物で,内部に細かいラミナをもつものとされる.先カンブリア時代には大規模に形成されたが,古生代以降急激に減少しているが,現在でも西オーストラリアやバハマでは大規模な石灰質のストロマトライトが海洋で形成され、ブラジルの塩湖、また米国イエローストーン国立公園内の温泉や間欠泉中には珪質のストロマトライトが成長している。このような現に生成しつつあるストロマトライトの形成環境の多様性を明らかにすることは先カンブリア代のストロマトライトの生成条件と環境の解明にとっても必要であるし、環境問題、アストロバイオロジーにも繋がる.筆者ら(赤井他、1995)は、日本で生成中の温泉性ストロマトライトを初めて記載した。その後の記載(赤井他1997)も含め、組成的にシリカ、石灰質、Mn質の3種を見いだしている。これらのうち、Mn質ストロマトライトについてさらに検討を進めた。一つはプレカンブリアのMn質ストロマトライトを見いだしていたが(Akai et al., 1997) 、それとの比較検討を行った。また、現在の湯ノ小屋温泉でのMn質ストロマトライトは単純温泉(無色透明,無臭)で,高温(70度C弱)の温泉水の流れるところで,黒色の温泉堆積物が,また少し泉温が下がったところには緑色_から_黄土緑色のシアノバクテリアを主とした厚さ数mmから5cmの微生物マットが形成され,ストロマトライトが生成している.シアノバクテリアのバイオマット中の温度45-60度C.黒色堆積物の表面には長さ1-数ミクロンの桿状バクテリア,緑色から黄土緑色のバイオマットはシアノバクテリア(Synechococcus sp ., Lyngbya sp .Oscillatoria sp., その他)とケイソウを主とする.マット中の鉱物は黒色層状堆積物が 直径数mmから約5cm,高さ最大3cmほどの黒色半球状ストロマトライト様構造物を呈し,同心円状のラミナが100ミクロンから1mmの間隔で見られる.非常にもろく,壊れると粉状になる.X線粉末回折では非晶質で,分析電顕でMnのほかにわずかにSi, Ca,を含む.白色ストロマトライトは直径1mmから1cm,高さ数mmから数cmの円柱または円錐状ストロマトライトでcalciteと非晶質シリカである.今回、このMn質ストロマトライトについて、実験漕で温泉水(70度と40度C)を循環させ、人工的環境での生成(バイオミネラリゼーション)を試みた。途中で、いくつかの化学形態のMnを補給するなどしてストロマトライト構造の生成を試みたが、この条件では、形態的にドーム状のストロマトライトは生成せず、代わりに粉体状Mn沈殿物の生成が見られた。これらの解析結果を述べる。Ref. Riding RE & Awramik SM (eds) 2000, Springer; 赤井 (2000) 宇宙生物学、14,363;赤井他(1995)地球科学49,292;赤井他(1997)鉱物学雑誌126、99.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680567561856
  • NII論文ID
    130006960860
  • DOI
    10.14824/jampeg.2004.0.95.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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