高温高圧下での斜方輝石フェルシック片麻岩の融解実験:東南極ナピア岩体ハワード・ヒルズにおける部分溶融の可能性

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タイトル別名
  • High-pressure and high-temperature melting experiments of an orthopyroxene felsic gneiss: Implication for partial melting of the Howard Hills, Napier Complex, East Antarctica

抄録

東南極ナピア岩体は,超高温変成岩で構成される。ハワード・ヒルズはナピア岩体の中央部に位置し,主にフェルシック片麻岩類で構成される (Yoshimura et al., 2000)。ハワード・ヒルズ北部には周囲をフェルシック片麻岩に囲まれた,規模が数mにも及ぶ超マフィック岩のブロックが存在する (Yoshimura et al., 2000; Miyamoto et al., 2004)。Yoshimura et al. (2000)は,この地域の片麻岩類に長石ソルバス温度計 (Kroll et al., 1993) を用いて,1000℃から1200℃の変成温度を見積もった。また彼らは,片麻岩類の地球化学的特徴から,ピーク温度時に部分融解作用によってメルトが生じていた可能性を示唆した。一方,Sato et al. (2004) は,超マフィック岩ブロックの端から採集された金雲母-斜方輝石グラニュライト (Sample no. TM981229-03E; Miyamoto et al., 2004) について,9-13 kbar/950-1200℃の温度圧力範囲で相平衡実験を行なった。その結果,このグラニュライトのピーク温度が1100℃より高温条件で,グラニュライトが部分溶融していた可能性を示した。今回の研究では,実験岩石学的側面から,ハワード・ヒルズにおける超高温変成作用と部分融解作用との関係をさらに詳しく探るため,この地域の基盤岩であるフェルシック片麻岩について高温高圧相平衡実験を行なった。 実験には,斜方輝石フェルシック片麻岩 (Sample no. TM981229-03Ef; Miyamoto et al., 2004) を使用した。この片麻岩は,超マフィック岩ブロックの端の金雲母-斜方輝石グラニュライトに隣接していたもので,主に斜方輝石,アルカリ長石,斜長石,石英によって構成され,若干のルチルとジルコンを含む。実験の出発物質として,“グラス90 wt%+種結晶(粉砕した片麻岩:10-20 μm)10 wt%の混合物”を使用した。グラスは,粉砕した片麻岩をグラファイト容器に詰め,10 kbar/1600℃で2分間溶融させた後に急冷して得た。相平衡実験の試料容器には,Mo-Pt二重容器(内側:Mo箔,外側:Ptチューブ)を使用した。Ptチューブの両端は,炭素アークによって溶接された。 相平衡実験は,9 kbar及び4 kbarの圧力条件で行なった。9 kbarでの実験は,愛媛大学設置のピストンシリンダー高圧発生装置を使用して,1150℃で行なった(保持時間:211時間)。4 kbarでの実験は,東京工業大学設置の内熱式ガス圧装置を使用して,1050℃及び1100℃で行なった(保持時間:それぞれ,48時間及び43時間)。その結果,実験を行なった全ての温度圧力条件で斜方輝石+斜長石+石英+液相の鉱物(相)集合体が見出され,アルカリ長石は見出されなかった。Sato et al. (2004) は,斜方輝石フェルシック片麻岩に隣接する金雲母-斜方輝石グラニュライトのピーク温度は1100℃より高温条件で,その際に部分溶融が生じていた可能性を示している。今回の,ハワード・ヒルズの基盤岩であるフェルシック片麻岩についての相平衡実験でも,1100℃前後で液相が生じた。Yoshimura et al. (2000) が片麻岩類の地球化学的特徴から示唆したように,我々の実験結果も,ナピア岩体が超高温変成作用を被った際に,ハワード・ヒルズのフェルシック変成岩が広域的に部分溶融していた可能性を示す。現在,追加実験として,ピストンシリンダー高圧発生装置を使用して,斜方輝石フェルシック片麻岩について9 kbar/1050℃で相平衡実験を行なっている。講演では,この結果も合わせて報告する。引用文献:Kroll et al. (1993) Contrib. Mineral. Petrol., 144, 510-518;Miyamoto et al. (2004) Polar Geosci.(採録決定);Sato et al. (2004) J. Mineral. Petrol. Sci.(採録決定);Yoshimura et al. (2000) Polar Geosci., 13, 60-85

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680567692416
  • NII論文ID
    130006960892
  • DOI
    10.14824/jampeg.2004.0.48.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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