走査型電子顕微鏡を用いたモード測定
書誌事項
- タイトル別名
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- Modal Analysis Using Scanning Electron Probe Microanalyzer
説明
モードとは、岩石の構成鉱物の量比であり、その岩石の化学組成や岩相の分類指標になる重要な値である。モード測定は、一般的にポイントカウンターを用いて、偏光顕微鏡下で行われる。この手法では、偏光顕微鏡による造岩鉱物の高い識別能力が必要であり、かつ、根気強い作業を必要とする。さらに、測定者がモード測定で豊富な経験を積んでいても、白雲母、ソーダ雲母と滑石の同定は光学的に不可能に近いし、細粒の岩石では石英と曹長石の同定を間違える可能性が高い。 近年、走査型電子顕微鏡に装着されたエネルギー分散型検出器の周辺ソフトの多機能化が進み、従来の点分析、線分析及び面分析に加え、定量・定性分析の自動化や自動多点分析が行えるようになった。今回、我々は、EDAX社製のSEM Multipoint Analysisソフト(EDAX Inc., 1998)の自動多点分析の機能を用いてモード測定を試みたので、その結果を報告する。 自動多点分析モードでは、最大3.2×2.45 mm2の二次電子線像上に等間隔に設定した格子点の特性X線のスペクトラムとその(半)定量分析値を自動的に得る事が出来る。任意の二次電子線像上に設定した全格子点の自動多点分析が終わると、分析面が重複しないように別の二次電子線像上で、再度自動多点分析を実行する。測定試料毎に、自動多点分析で得られた全てのスペクトラムと分析値をスペクトラム閲覧ソフトと表計算ソフトを用い、元素の組み合わせと含有量に基づいて各格子点の鉱物同定、すなわちモード測定を行う。同様の作業を、薄片をカバーするより広い領域で実施すると、岩石全体のモード量が得られることになる。 では、どの程度の領域を測定すれば信頼できるモード量が得られるだろうか。細粒(平均粒径が80 – 200 um)で均質な試料では、分析面毎の主要鉱物のモード量に大きな変動が無かったので、数画面の平均値をモード量と見なした。細粒(平均粒径 = 100 um)だが鉱物分布が不均質な試料や粗粒な試料(平均粒径 = 350 – 800 µm)では、主要構成鉱物の分析面毎のモード量が全分析面の平均モード量±標準偏差(1σ)におおむね収まるまで分析面を増やすことにした。今回検討した試料では、分析面を10 – 15以上に増やせば、上記の基準を満たした。 電子顕微鏡を用いて得たモード量の信頼性を検討するために、ポイントカウンター法で得たモード量と比較した。平均粒径が200 um以上の試料では、両測定法で得たモード量のピアソンの積率相関係数は0.9以上となり、両測定法で得たモード量はほぼ同じ結果を示すと判断した。 電子顕微鏡を用いたモード測定は、定量分析に基づくので、大半の造岩鉱物を同定でき、鉱物同定が偏光顕微鏡に比べ確実である。このモード測定では、自動多点分析による特性X線の取り込みに数時間必要とするが、実作業(二次電子線像の分析面の移動と鉱物同定)は、約5000個の格子点では、最大2時間程度で完了できる。しかし、粗粒な岩石(平均粒径 > 2 mm)は、二次電子線像画面の制約から不向きである。平均粒径が200 um以上の試料は、ポイントカウンター法とほぼ同じ結果が得られた。従って、平均粒径が200 um – 2 mmの岩石に対して、このモード測定法は有効と判断できる。 EDAX Inc. (1998): Multipoint Analysis USER'S MANUAL.
収録刊行物
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- 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
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日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集 2005 (0), 68-68, 2005
一般社団法人 日本鉱物科学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680568085888
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- NII論文ID
- 130005019889
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可