幼児とのふれ合い体験に関する幼稚園・保育所側の意識

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タイトル別名
  • Consciousness of Kindergarten and Nursery School about Contact Experience between Teens and Children

抄録

問題<BR> 家庭科の保育に関する授業では、幼稚園や保育所などの就学前施設でふれ合い体験を実施することが勧められている。一方、就学前施設側では、家庭科の授業での保育体験学習以外にも、中学・高校の職場体験、小学校の生活科や総合的な学習の時間での交流(?)など、様々なふれ合い体験を受け入れている。本研究では、こうした様々なふれ合い体験を引き受けている幼稚園や保育所側の意識を、アンケートとインタビューによって明らかにすることを目的とする。幼稚園や保育所側の協力を得てよりよいふれ合い体験を進めていくためには、家庭科教員が園側についての理解を深める必要があると考える。本研究が、その理解を推進するための示唆となるだろう。<BR> 方法<BR> 全国251の幼稚園保育所を無作為に抽出してアンケートを郵送配布した。回収したアンケートは、140(回収率55.8%)であり、そのうち幼稚園は46園、保育所は95園、不明1園であった。 回収したアンケートの中から、様々な都道府県になるように10園を選択して園長にインタビューを実施した。インタビュー先の園は、青森県(2園)・山形県・岩手県・島根県・富山県・鹿児島県・徳島県・京都府・大分県である。保育所が9園、幼稚園が1園である。<BR> アンケートの内容は、おもに「幼児とのふれ合い体験」の実施内容や活動についての意識を尋ねた。インタビューでは、更に「幼児とのふれ合い体験」の園児と生徒達各々にとっての教育的効果や問題点について尋ねた。<BR> 結果<BR> 1.アンケート結果<BR>  a)取り組み状況:「幼児とのふれ合い体験」は、「時々している」と「している」をあわせると86.3%と取り組んでいる園が多いことが分かった。<BR>  b)活動や授業の種類:「どのような授業や活動」として学校側が園に依頼してくるのかという問に対しては、1つの種類の授業や活動のみの回答(例えば中学校家庭科のみ)は11園で、あとは複数のふれ合い体験を実施していた。一番多かったのが、中学校の職場体験で、次いで高校の職場体験であった。中学校の家庭科は、3番目であった。<BR> c)活動内容:「子ども達と遊ぶ」が一番多く、次いで、「子ども達の着替えや食事の援助」となっていた。職場体験としてのふれ合い体験が多いためだろう。<BR> d)ふれ合い体験に関する意見:肯定的な意見が多く、幼児にとっても学生にとっても良い経験となるという回答が、80%以上見られた。また、「積極的に取り組んだ方がよい」という意見も60%以上見られた。その一方で、もっと工夫が必要だという意見がおよそ10%あった。保育所の保育者が自由記述で「学校の担当の先生により交流の意図が分かりづらい場合があり、交流の機会があればよいというものではないという場面があった。活動の内容については、両者のしっかりとした話し合いの時間が必要であると感じる」と記していた。工夫が必要と考える保育者の代表的な意見だろう。<BR> 2.インタビュー内容から<BR>  a)幼児にとっての教育的効果:中学生や高校生と生き生きとうれしそうに活動している姿が保育者によって語られた。いろいろな人とふれ合い、いろいろな言葉を聞くことが今の子ども達にとっては大切だと語る保育者もいた。子ども達のテンションがあがり、生徒達が帰ったあとの園での生活が困らないかという問いについては、日々の生活の中でそういう場面があっても構わないこと、むしろそういう場面があることが日常の生活だと語る保育者もいた。<BR> b)中高生にとっての教育的効果:子育て支援の一貫として考えていると語る保育者がいた。やがて親になる中高生達が幼児とふれ合うことで、自己肯定観が持てるようにすることが大切と考えて、そういう場面をふれ合い体験の場に作るようにしていた。ふれ合い体験を通じて、中高生を育てていこうとする保育者の考えを聞くことができた。<BR> c)ふれ合い体験の問題点:アンケートの自由記述にも見られたように、学校側の連絡不足が挙げられた。その他に、中高生のマナーについて言及された。幼児の前では困るような行動については、保育者が注意を促しているようだった。<BR>  d)ふれ合い体験への態度:インタビューした園の多くは、ふれ合い体験のために独自にプログラムを立てたり、所属する市町村で中高生向けの冊子を作っていたりして、受け入れ態勢を整えようとする様子が見られた。全体的に非常に協力的であるが、様々なふれ合い体験を受け入れており、多忙な様子ではあった。<BR>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680568429312
  • NII論文ID
    130006960923
  • DOI
    10.11549/jhee.50.0.20.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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