大学生における社会人としての自覚・責任に関する実態
書誌事項
- タイトル別名
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- Consiousness and Responsibility of Member of Society in University Students
説明
【研究目的】 家庭科教育では、「よりよい生活を目指し、主体的に判断して意思決定できる人間の形成」を目指している。そのためには、生活的自立のための基本的な技術・知識の習得に加え、自分の人生は自分で築くという、生活づくりに対する積極的な意識と態度が重要であり、その割合は年齢を重ねるほどに大きくなっていくと考えられる。すなわち大学生活は、生活すべてにおいての自立を目指し、社会に出るための準備をする最終段階であるといえる。そこで、本研究では社会にでることを目前に控えた大学生が、社会人としての自覚・責任についてどう考えているかを意識と実態の両面から探究し、さらにそれが特に企業における社会人として求められる資質・能力との関連においてどれほどの相違があるのかを追究することを目的とする。【研究方法】 調査対象は、千葉大学全学の3年生および4年生548名、有効回答率は98.0%であった。調査期間は2004年6月_から_12月で、質問紙留置法によるアンケート調査を実施した。調査内容は_丸1_社会への貢献、_丸2_社会的ルールへの対応、_丸3_自分が周囲に与える影響、_丸4_他者とのコミュニケーション、_丸5_物事への取り組み方、_丸6_自己管理等である。なお、本研究における調査内容において、社会人として求められる自覚・責任とは特に企業に働く社会人として求められるものであることを前提として規定している。以上から、一部上場企業において長年人事に関する業務に携わってきた5名へインタビュー調査を行い、そこから抽出された内容と文献をふまえて質問内容を設定した。【結果】 全体の傾向として、社会的ルールへの対応、自己管理、他者への思いやり・受容、自分自身の物事に対する取り組み方に関する内容において高い意識が認められた。しかし、全体的な意識の高さに対して、実態が伴っていないという傾向が認められた。 性別による比較では、女性のほうが男性よりも他者に対する理解や受容の気持ちが強く、また実態においても肯定的結果が高いことが明らかとなった。社会的貢献等への積極的な行動に関する項目においては、全体的に女性が意識・実態ともに肯定的な回答が高い結果が認められた。男性が女性に比して高い結果が得られた項目は、意識・実態ともに他者を説得し自分の意思を貫こうとする等の内容が多いことが認められた。また、政治・経済への興味関心等も男性が高いことが明らかとなった。 学部による比較では、未知に対する意識や柔軟性は社会科学系学部生が自然科学系学部生に比して高いことが明らかとなった。教育学部と医学部の結果に共通する点が多く、他者への理解・受容、物事に対する誠実・積極的な取り組みに関する項目において両者に高い傾向が認められた。また、教育学部・医学部・薬学部・園芸学部等の将来の職業が明確である学部の学生のほうが目指す自分像を持っていることが明らかとなった。自己規制に関する項目では、医療系学部生がその他の学部生に比べて否定的な回答が多い結果となり、自己規制ができていることが明らかとなった。 学年による比較では、意識項目に関しては学年間において大きな相違はみられず、全体的に肯定的な回答において高い結果が得られた。社会貢献等への積極的行動に関する項目では4年生のほうが肯定的結果においてやや高い傾向が認められた。実態項目においては4年生のほうが3年生よりも肯定的な回答が多いことから、4年生のほうが意識と実態が一致していることが明らかとなった。 今後は、本研究をさらに発展させ、既に社会に出ている若者たちが社会人としての自覚・責任についてどう考えているかを意識・実態の両面から探究し、企業において求められる能力・資質との関連においてどれほどの相違があるのかを追究する。
収録刊行物
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- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
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日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 48 (0), 34-34, 2005
日本家庭科教育学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680568799232
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- NII論文ID
- 130006961093
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可