学際的な手法による授業づくり

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タイトル別名
  • -地域教材を活かす総合的な学習と家庭科-

抄録

目的 日本の教育の歴史においては,総合的な学習はそれぞれの土地の産業構造や子どもたちの生活に根づいたものであり,地域・地方から発信されたという特徴をもっている。 現在の教育改革の大きいうねりの中で,基本に据えられる視点の1つは,地域を背景とした各学校自身がカリキュラムを組み,教育上の諸問題に去り組むカを蓄えつつ,自らの問題意識に適う教育と学習を展開していける場としていく事である. <br>このような問題意識にたって,E大学教育学部の研究プロジェクト「学際的アプローチによる地域教材の開発研究」と,F農業高校(総合学科)の先行的,総合的な学習「フリーサブジェクト」の企画とが合流し,通年の1講座「私たちの暮らしのルーツ-宇和島・松山・今治周辺」を新たに設定した。 <br>この試みの目的と意義は,地域教材の開発と総合的な学習の構成,高校・大学・地域(博物館・専門学校・地域の人々など)の連携のはか,<総合的な学習>と<家庭科教科>との関わり合いや関係の枠組みについて考察を深める機会と考えた.<br>方法 授業は,各専門・領域からアプローチする高校・大学教員と地域の専門家,フィールド調査に応じて下さった人々,TA(かつ卒業研究の一環)の学生,授業を選択し受講した12名の高校生(女性6,男性6)との協働によって創りあげられた。 <br>授業者は次の通りである.皆川勝子(F高校・家庭科) 田中弘子(E大学・生活管理)福田安典(E大学・古典文学) 川岡 勉(E大学・歴史学)佐藤栄作(E大学・日本語学) 鮒田崎子(元E大学・被服学)岡部美香(E大学・教育学) 土居聡朋(県歴史文化博・歴史学)渡邊笙子(調理専門学校・郷土料理)長野隆男(E大学・食品学) <br>当初の事務手続き等と授業の設定・構成に関し,2001年12月から翌4月まで検討を重ねた。授業の期間は2002年4月から翌3月まで,授業者はそれぞれのテーマ・領域を2~4回に亘って行った。 年間の授業構成の原案を作成して以降,経過を見ながら何度か修正や調整を行った。また全体を前半と後半に分けて,2002年10月と,翌2月に「中間報告会」「最終報告会」の場を設け,高校生による創造的発展的な調査研究等の発表を中心に,発表者同士の相互評価や授業者のコメント,全員による質疑・話し合いを行った。<br>結果 <br>(1)各担当の授業および報告会関連の,課題・レポート,作品,報告掲示物,アンケート・感想文等が提出された機会が28回におよび,その総数は約256件,受講生1人平均約21件となった。平常の各授業に関しては提出にばらつきがあり,殆ど毎回提出した受講生の割合は約42%であった。しかし「中間報告会」を機に,授業の構成員全体の距離が急げきに狭まった感じがあった。特に,毎回の授業に関心を示さないように見えた受講生が,実習や「最終報告会」後に提出したアンケート・調査報告の内容には,目を見張らせられる展開があった。<br>(2)高校生による,授業や地域調査における「気づき」「掘り起こし」,また貴重な「異質な出会い」が少なからずあった。授業の効果とともに,これらを精査し今後に繋げていく必要がある。<br>(3)上記(1)(2)とともに,各報告会の高校生の多様な方法と発想による発表を見る限り、この授業を構成するにあたって,多領域に亘る共同研究等の蓄積が一定程度は結実したと言える。試みの目的に向けた契機を得たと同時に,検討課題をさらに整理したい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680570507136
  • NII論文ID
    130006961265
  • DOI
    10.11549/jhee.46.0.67.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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