PISA,DeSeCoにみる今日的学力と家庭科
書誌事項
- タイトル別名
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- How does home economics relate to the literacy and competencies of PISA and DeSeCo?
抄録
<BR>(目的) <BR>近年、世界の子ども達の学力をはかる方法がOECDによって開発され、大きな注目を集めている。「リテラシー」をもとにしたPISA(生徒の学習到達度評価)調査や、このPISA調査の学力の考え方の上位概念の能力として提示された「キー・コンピテンシー」(学校教育で身につける「学力」だけでなく、ひとが生涯にわたって培うべき「能力」を見通したもの)がそれである。本研究の目的はこれらのリテラシーやキー・コンピテンシーが目ざす世界が求める学力(能力)の方向と普通教育としての家庭科が培う力が、どのように関係するかを検討し、これからの家庭科の可能性と課題を明らかにすることである。 <BR>(方法) <BR>公開されているPISA調査の問いを「科学的リテラシー」、「数学的リテラシー」、「読解力」、「問題解決能力」の領域ごとに分析し、そのリテラシーと家庭科の学習内容や課題との関連をみる。またPISA調査の上位概念であるDeSeCoのキー・コンピテンシーに焦点をあて、家庭科のカリキュラム理論をもとに、世界の学力(能力)論と家庭科の学習課題(目標)との関連を検討する。 <BR>(結果) <BR>1)PISA(Programme for International Assessment)調査の「知識・技能を実生活のなかで総合的に活用する力をつける」という視点は、家庭科の個人と家族の生活課題の解決を目ざす教科目標とかかわりがみられる。また、「科学的リテラシー」、「数学的リテラシー」、「読解力」の各領域の出題には、日常生活で出あう課題の解決や、生活用品、健康にかかわる問いがみられる。特に各リテラシーの領域横断型の「問題解決能力」の出題においてこの傾向が強い。 <BR>2)OECDは1997年にDeSeCo(「コンピテンシーの定義と選択」:Definition and Selection of Competencies)プログラムの検討を開始した。そこでは生涯にわたってひとが身につける能力が検討され、3つのキー・コンピテンシー:1.相互作用的に道具を用いる(言語、シンボル、テクスト、知識・情報、技術の活用)、2.異質な集団で交流する(人とのよい関係の構築、チームでの協力、対立の調整・解決)、3.自律的に活動する(広い視野での行動、人生計画・個人的プロジェクトの設計・実行、権利・利益・ニーズの擁護・主張)が定義された。この3つのコンピテンシーを培う上で、家庭科の学習内容・方法は多くの面でかかわりがあると考えられる。例えば、生活の自立にむけた技術や知識を習得し活用していく衣・食・住領域の学習、情報を収集・選択・判断する消費者、環境、地域などの学習は1.「相互作用的な道具の活用」にかかわっている。また、他者との関係性を課題とする家族、高齢者、保育、福祉、人権、ジェンダーの学習や調理実習、調べ学習などのグループワークは2.「異質な集団での交流」に関連がみられる。さらに、主体的に自分の生活や社会にかかわっていくという家庭科の学習課題は3.「自律的な活動」を包括的にカバーしていると考えられる。 <BR>以上、OECDが提起したPISA調査におけるリテラシーや、DeSeCoにおけるキー・コンピテンシーと家庭科の学習課題(目標)が目指す方向性が重なることが確認された。社会科学と自然科学の双方にまたがり、それを生活を軸に総合するという家庭科の特性が、他の教科にはない積極的な意味と重要性を持っており、将来を見据える世界レベルの学力論議の中に、家庭科が位置づくことが示唆された。リテラシーやコンピテンシーをより意識化することを通して、家庭科における知識・技術の習得、定着から実際の応用力、実践力を確実につける手だてをどうするかという課題や人間関係力、市民としての主体的、自立的な行動力、問題解決能力をいかに培うかという課題がより鮮明に見えてくる。
収録刊行物
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- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
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日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 50 (0), 9-9, 2007
日本家庭科教育学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680571163904
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- NII論文ID
- 130006961533
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可