富山県富山市立山温泉新湯産オパール調査報告
書誌事項
- タイトル別名
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- The investigation report of opal occurrence at shinyu hot spring in Toyama prefecture
説明
北アルプス立山連峰の南西側に立山カルデラと呼ばれる大崩壊地帯がある。この崩壊地の底に立山火山の火口湖が3つあり、その一つが立山温泉新湯(以下新湯と称する)である。1856年(安政5年)の飛越地震以来、冷泉から温泉になったと記録されており、PH現在でも70度を少し下回る温度を維持している。明治時代には魚卵状珪華(別名玉滴石)を産出し、その産状は世界的にも珍しいものである。我々は、立山カルデラ砂防博物館の学芸員を中心に2002年以来、毎年調査を続けてきた。その結果、新湯の地質と新湯産オパールの産状が明らかになったのでここに報告する。<BR> 一般に無色、白色、灰色のコモンオパールは多く見られるが、特に白色のものは貝殻様の堆積が見られる。大型のものは、厚さ10~20cm。はぼ水平堆積した様子が見られ、池底で形成されたことを示唆する。小型のものは旧火口壁に残存する温泉堆積物中に幅数cm、長さ20~30cmの脈として産出する。<BR> この調査を通して注目に値する発見が2件あった。一つは遊色効果を示すオパールが発見されたことである。プレシャスオパールは温泉堆積物中のコモンオパール脈に伴って産出することが多い。魚卵状珪華を採掘していた頃の水面は現在よりも4~5m高く、その当時の温泉沈殿物がすり鉢状の旧火口壁に残存している。つまり、プレシャスオパールは現在の水面よりも高い位置に産するため、明治時代の堆積と考えられる。一般に幅1~2mmの脈状で面積は1平方?以下の場合が大半である。全体に脆く、カット可能なものは現在見つかっていない。しかし、調査中に池底の再堆積層中にも数mm程度のものが見つかったため、現在も堆積中である可能性が出できた。<BR> もう一つは魚卵状珪華の再発見である。小さな砂粒を核とし、マントル部分を無色透明~白色不透明のオパールが構成する粒状のもので、その形状はまさに魚卵状を呈する。現在見られるものは当時の残存物であり、直径2mm程度が一般的だが、5mmを超えることも珍しくない。その美しさから、明治時代には日本産鉱物として世界中に売られていたと聞く。調査中に当時のズリ跡から破片や塊状の魚卵状珪華がみつかった。採掘当時の美しさはないが、中には母岩付きのサンプルも採取できた。これらの試料は、伝聞しか記録のない明治時代の産状を推定するために重要な役割を果たすと考えられる。
収録刊行物
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- 宝石学会(日本)講演会要旨
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宝石学会(日本)講演会要旨 28 (0), 15-15, 2006
宝石学会(日本)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680571193984
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- NII論文ID
- 130006961581
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可