奈良県天川村産スーパーレインボーガーネットについて

書誌事項

タイトル別名
  • 'Super rainbow garnet' from Tenkawa, Nara Prefecture, Japan

説明

<br> アンドラダイト(andradite)はカルシウムと3価の鉄に富むガーネットで、鉄をアルミニウムに置換したグロッシュラー(grossular)との間でほぼ連続的な固溶体系列をつくっている。1930年代にイリデッセンスによって虹色に輝くアンドラダイトの変種が見つかり、レインボーガーネットと呼ばれている。レインボーガーネットは産出が非常に稀で、これまで数例しか報告がなく、市場でもほとんど入手困難な状態であった。ところが最近、奈良県吉野郡天川村より膨大な数量のレインボーガーネットが見つかり、“スーパーレインボーガーネット”と称して、昨秋からミネラルフェアーを席巻している。本研究は、この天川村産レインボーガーネットに関して初めて鉱物学的な研究を行なったものである。<br> 観察に用いた試料は、大きさ10mm程度で{110}面に囲まれた12面体の外形をもつ。色はやや赤みを帯びた淡茶褐色であるが、光を入射する方向によっては帯緑色のシラーを発する。平均化学組成はAnd96.0Grs3.3Sps0.7である。このガーネット試料のc軸に垂直な薄片を作製したところ、8個の{110}セクターに分かれることがわかった。そのうち{110}面が薄片面に対して斜めとなっている4つのセクター内では強いイリデッセンスが観察されたが、{110}面が薄片面に直交する残りの4つのセクターではイリデッセンスは観察されなかった。したがって、イリデッセンスの原因は{110}面に平行な薄膜の重なりを光が通過する際に起こる干渉によるものと考えられる。<br> 光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡での観察では、{110}面に平行なバンド組織(幅170~300μm)やその中に波状のラメラ構造(幅10~20μm)が観察された。とくに後者には有意な組成差も確認できた。しかし、これらの組織は光の干渉を起こすためには間隔が大きすぎるため、イリデッセンスの原因とは考えられない。この試料をさらに高分解能電子顕微鏡で観察したところ、波状ラメラの間に間隔100~300nm程度の微細なラメラ構造が{110}に平行に存在することが明らかになった。このラメラの成因は、離溶によるもの(Hirai & Nakazawa, 1986)であるか振動累帯構造(Akizuki et al., 1984)のいずれかであると考えられるが、いずれにせよこの微細ラメラが天川村産のレインボーガーネットの虹色の原因となっていると結論できる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680571329280
  • NII論文ID
    130006961723
  • DOI
    10.14915/gsj.27.0.11.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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