中学校家庭科の家族学習におけるロール・プレイングの効果の検討

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書誌事項

タイトル別名
  • Effectiveness of role playing in family education of junior high school's home economics.

抄録

<br><br>目的<br><br> 家庭科において、ロール・プレイングは人とのかかわり方を学ぶ方法として実践され、その教育的な効果についても報告されている。その中で、矢吹(2001)は大学生を対象にロール・プレイングを5回行うことにより、自己を中心として他者との関係のあり方を段階的に学んでいくことを指摘している。また、鎌野(2016)は、ロール・プレイングによる中学生の家族関係に関する学びは、他者になりきり実感する(情緒)自己と家族の客体化(認識)無理のないかかわりを見出す(行為)というプロセスであることを示している。但し、これらの研究は事例研究や観察研究、参加者の内省報告がほとんどで、ロール・プレイングの効果に関して量的に検討しているものはない。<br><br>そこで、本研究ではまず、家庭科の家族学習におけるロール・プレイングの効果を明らかすることを第一の目的とする。また、この効果を明らかにするために人との関係性を「自己と他者との間の認識と相互作用における行為」と定義づけ(2015,鎌野)、この概念を基にその効果を量的な視点から明らかにすることを第二の目的とする。<br><br>方法<br><br> 本研究は、2つの目的をもつことから、その方法に関してもそれぞれ分けて示す。まず、授業の効果に関しては、・あなたは家族の学習に興味がありますか(興味をもちましたか)、・あなたはロール・プレイングの授業は楽しみ(おもしろかった)ですか、という2つの質問項目を用いた。次に「人との関係性」の質問項目の作成にあたっては、認識と行為の効果から捉えることとした。具体的には、以下の7項目を使用し、その対象を親、家族、友人として全部で21項目からなる質問紙を用いた。<br><br>・あなたは、親の気持ちに興味・関心はありますか、・あなたは、親の気持ちを受け容れることはできますか、・あなたは、親の行為(言うこと・やること)に興味・関心はありますか、・あなたは、親の行為(言うこと・やること)を受け容れることはできますか、・あなたの行為(言ったこと・やったこと)で親がどんな気持ちになるかわかりますか、・あなたの行為(言ったこと・やったこと)で親のどんな行為を引き出すかわかりますか、・あなたは、親子関係をよりよくするために、行為(言ったり・やったり)していますか、である。<br><br> 調査対象は、千葉市の公立中学2年生106名であり、回答方法については4件法とした。調査時期は、2015年9~10月である。<br><br>結果<br><br> 調査結果から、家族学習のロール・プレイングの効果として、以下の点が明らかとなった。まず、授業の効果については、どちらの項目においても有意差が現れ、授業後に家族の学習に興味を持った生徒が増え、ロール・プレイングを楽しいと思った生徒も増えた。「人との関係性」に関しては、認識に有意差が見られた。また、生徒の関係対象とした、親、家族、友だちについては、親、家族に有意差が見られ、友だちについては変化が見られなかった。<br><br>鎌野育代.(2015).中学校家庭科における保育・家族学習の授業と生徒の学び-家庭科における「人との関係性」の育成の視点から-. 東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科学校教育学専攻生活・技術系教育講座博士論文<br><br>鎌野育代.(2016).学族学習のロール・プレイングにおける中学生の家族関係に関する学びのプロセス.日本家庭科教育学会誌,58(4),210-221.59<br><br>矢吹芙美子.(2001).心理劇状況における自己の体験的把握と自己変容:共に育つ保育者の養成の方法として.大妻女子大学家政系研究紀要,37,163-179.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680571359488
  • NII論文ID
    130005287083
  • DOI
    10.11549/jhee.59.0_5
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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