食生活への知識を深める「文字かるた」の開発

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Development of Karuta for having eating habits understood deeply

抄録

1 目的<br> 高等学校「家庭基礎」を学習した生徒達の「食生活の自立」を目指し、これまでレシピ集の開発やツールを使った食育の授業実践を行ってきた。その中で、視覚的に捉えさせることにより学習への理解が深まり、繰り返し学習を振り返ることにより当然のことながら学習が定着することを実感した。しかし、食生活分野全般において生徒達が正しい食生活の知識を身につけ、自己の食生活を見直そうとする行動変容までつながっているとは言えない。そこで、食生活の基本的な知識を深めることが行動変容を促す第一歩であると考え、そのための教材開発とその教材を用いた授業実践を行い、理解を深めるための教材としての効果を探ることを目的とした。<br><br>2  方法<br> 家庭科教材カタログを中心に食生活分野の教材・教具の特長から、知識を深めるためにはどのような教材が適しているのかについて検討を行った。そして、近年、多く販売されているカード教材と食育の学習で活用されているかるたに着目し、「文字かるた」の開発に取り組んだ。さらに「文字かるた」をさまざまな場面で活用することを考え、その授業実践を2015年10月~2016年3月にA校(1学年2クラス)、B校(2学年1クラス)で行い、質問紙法による調査を行った。<br><br>3  結果及び課題<br>(1)「文字かるた」の開発<br> カード教材は献立や食品などが実物大で表示され、「献立や食事の組み合わせる力を養う」ことや「興味・関心を促す」ことを目的としたものが多い。カード教材は手軽で、視覚的に捉えることで理解しやすくなり、身近な問題として具体的に考えさせることができるという利点がある。しかし、現場の教員からは価格が高く、購入しても時間や内容面で十分に活用できないなどの理由が聞かれた。そこで安価で手軽にできることを第一に考え、読み札も取り札も文字のみの「文字かるた」の開発を行った。「文字かるた」は工作用紙に印刷した用紙をスプレーのりで貼りつけるという簡単なもので、読み札の文言は生徒にキーワードを提示し考えさせ、その中から選んだものを今回は使用した。キーワードは「家庭基礎」食生活分野の基本的学習内容と食育の基本となる柱をもとに提示した。かるたの札にはそのキーワードを赤文字で表記し、「文字かるた」44枚を作成した。<br><br>(2)「かるたカード」を用いた授業実践<br> (第1段階)毎時間の授業では、「文字かるた」をA4に拡大した読み札を提示し、授業を行い、(第2段階)復習では読み札を暗唱させたり、小テストとして活用することもできる。今回は、(第3段階)振り返りでかるた取りゲームとして活用することしかできなかったが、1班5名でチーム対抗戦やリーグ戦など学校の実態に合わせて行った。かるたの遊び方は単純でよく知られているため、ルールの説明もいらず、気軽に取り組むことができた。<br><br>(3)授業後の質問紙調査の分析結果<br> 「文字かるた」を使った授業が「楽しかった」「どちらかといえば楽しかった」と回答した生徒が97,7%で、同時に授業にもしっかり取り組めたと回答している。また、1回のゲームではあるが、34.7%の生徒がかるたの内容を5割以上覚えることができたと回答している。「かるたを使った授業」での気づきや学びについては、「授業で覚えた語句を生活と結びつけて理解することができた」「(ゲームが)終わったら家庭科の語句を覚えていた」「楽しみながら家庭科の知識が身についた」などの自由記述がみられた。このように競技性を持たせたことにより、ゲームを通して学習内容への理解を深めることができることがわかった。今後は第1段階から第3段階への積み重ねを通して、高校生としての知的好奇心を喚起しながら、食生活への行動変容につなげていきたい。<br><br> 

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680571365248
  • NII論文ID
    130005287023
  • DOI
    10.11549/jhee.59.0_62
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ