環境問題への低関心層に対する省エネ教育の効果
書誌事項
- タイトル別名
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- Effect of energy saving education for low people interested in environmental issues
説明
【目的】我々はこれまでに,食生活に関しての省エネ教育を行うことにより,エネルギー・水使用量,及びごみ廃棄量の大きな削減効果ならびに行動変容効果を報告してきた。人間の行動変容においてその対象となる行動への興味・関心の度合いは人によって大きく異なり,行動ごとのステージも異なると考えられる。昨年度の大会で,環境問題に関心があるグループに対しては教育効果が得られやすく,関心がないグループに関しては教育効果が得られないことを報告した。このことからレベルを揃えるための情報提供,もしくは事前学習を行うことで効果があがる可能性が示唆された。そこで、本研究では環境に関心が低い層が省エネ行動の変容につながるためには,まずは環境に関心を持たせた上で,教育を実施することが必要だという仮説に立ち,環境への関心を持たせるための導入教育を実施し、教育効果を検証した。<br>【方法】対象者は,東京家政大学 栄養学科 3年生 家庭科教職課程必修科目「食教育の研究」平成27年度履修者 66名とした。環境への関心を持たせるための導入教育として小・中・高等学校で使用することを目的とした「省エネ行動」を体系的に学べるテキスト『省エネ行動スタートBOOK』を使用した。テキストの中から「省エネについて考えてみよう!」,「エネルギーはどこからくるの?」,「地球からのSOS」を取り上げ、実際にワークシートを記入させるとともに,アクティブラーニング形式で実施した。各学生の環境への関心度、日常の省エネ行動実践度合いは自己評価シートを教育の前後で記入させ、評価した。自己評価シートの分析は欠損データを除き65名分で行った。<br>【結果】省エネ行動の実践に結び付く教育を行うためには,環境問題に関心を持たせた上で,教育を実施することの有用性を確認するため,環境への関心を持たせるための導入教育として,「省エネ」「エネルギー資源」「地球温暖化」の3つを取り上げ,下記の結果が得られた。<br>自己評価シートの「環境問題に関心がありますか?」との問いに対して,教育後の結果で,「関心なし」グループ(関心がない,あまり関心がない,どちらともいえない)は約17%いたが,教育後約9%と減少し,「関心がない」と答えた者はいなくなった。また,「関心あり」グループ(関心がある,やや関心がある)は,教育前約83%いたが,教育後約91%と増加し,特に「関心がある」者の割合が増加していた。教育前「関心なし」グループでは,「関心がない」「あまり関心がない」と答えた学生はいなくなったことから,当初の目的であった環境問題への関心がない対象者のベースをそろえるための教育効果が認められ,テキストを使った導入教育による環境への意識醸成ができたことを確認した。<br>環境に関心を持たせレベルをそろえた上で省エネ教育を実施したことで,日常生活における省エネ行動実践度が上昇することが確認できた。環境問題への意識をそろえるためのベースの教育を行っていなかった昨年度の調査結果と比較すると,昨年度は食生活に関する省エネ行動項目15の内6項目しか実践度が上がらず,全体の平均点は上がらなかったが,今年度は15項目中11項目で実践度が上がり,全体の平均点も上昇していたことからも,事前に環境問題への関心を持たせてから省エネ教育を行うことで省エネ行動実践度が上がる可能性が示唆された。
収録刊行物
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- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
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日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 59 (0), 78-, 2016
日本家庭科教育学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680571385088
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- NII論文ID
- 130005287112
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可