食育レッスンを用いた保育(ふれあい体験)学習の拡張的学習の可能性と効果

書誌事項

タイトル別名
  • Effect of learning by expanding about nursery teaching(experience in early childhood education and care) with dietary education lesson

説明

問題と目的<br>これまで、本研究グループは、保育学習と食の学習を関連付けた授業展開について検討してきた。幼児の食に対する保護者へのアンケート調査を保育体験学習に取り入れることで、保護者の視点から幼児の食をとらえられること(阿部ら、2010)、ふれあい体験で幼児と一緒に食べる活動を入れることが、幼児理解を深めること(金子ら、2015)を明らかにしてきた。<br>本研究は、ふれあい体験の場で意図的に行った「食育レッスン」の効果について検討する。「食育レッスン」は、園児に食についての理解を促す場として設定した。家庭及び園で熱心に指導されることが多い「食」について、日頃あまり園児と接する機会のない中学生が学習の場を提供するのが、「食育レッスン」である。劇やクイズなどを中学生が準備してきて、園児の前で披露する。この学びは学習の場を学校外に設定し、中学生が幼児に食の知識を伝えようと活動することで中学生の集団的な成長を促す「拡張的学習」として位置づけられる。中学生にとって、「食育レッスン」がどのような効果があるのかを検討するとともに、中学生が、小中学校で学んできた食の内容を、どのように活用し、園児に適した「食育レッスン」を作成していくのかも検討することとした。さらに、生徒が「食育レッスン」の準備をしていく中で、受け身的態度から、最終的にはグループ全体で楽しそうに積極的に組んでいけるようになる理由についても、検討する。<br><br>研究方法<br>中学生3年生7クラスの生徒が、クラスごとに幼稚園に訪問し、保育者主導による2,3のゲームを行った後、食育レッスンを園児に実施した。その後、一緒にお弁当(給食)を食べ、お別れの時間まで遊ぶふれあい体験学習を計画した。事前学習として、「幼児理解」の次に「食育レッスン」作りを4時間設定した。1時間目は、個人で夏休みの宿題として考えてきたものを、班で見せ合い、代表を決定した。2、3時間目は脚本担当2名を選出し、さらに良いものにするための検討を加えると同時に、他の班員は、劇に必要なグッズ作成等を製作した。必ず全員で立ちげいこを含めたリハーサルも行わせた。4時間目のクラス発表会では、「食の学び」「幼児の興味関心度」「幼児の立場にたった表現力」等の評価項目を設定し、クラスで2つの代表班を投票により決定した。交流の後、事後学習として、「幼児とのかかわり方」「ふれあい体験と食の学習」「ふれあい体験と住環境の学習」を行った。<br>触れ合い体験の場で意図的に行った「食育レッスン」の効果について、交流前に行った「食育レッスン」発表会後の感想、幼児との交流時のナラティブから「食育レッスン」に関する記述、保育学習後に実施したアンケートから、分析を行った。<br><br>結果と考察<br>生徒は、小中学校で学んだ「食の学習」を幼稚園で「レッスン」する際に、幼児の興味関心を引き出すために知恵を出しあい劇やクイズを創造していた。交流の中で行われる「食育レッスン」は、発表を観る際に生徒が膝に幼児を載せたり、レッスンに関する会話をしあったりしていた。生徒は、幼児の前で「レッスン」することは難しいと感じながらも、評価を意識せず、わかりやすく楽しんでもらうために一生懸命に取り組んだ。幼児に対する効果は、一緒に食べたお弁当の時、幼児の食べ方に良い影響を与えていることが明らかであり、幼稚園教員を驚かし、喜んで頂くことができた。<br>生徒は、食の知識だけでなく、自身の経験を総合して幼児に食の大事さを伝え、幼児の反応や幼児の発達段階を見とりながら、幼児に適した食の知識を伝えようと即興的に工夫していた。ふれあい体験時に行う「食育レッスン」は、学習の主導権を生徒自身に委ねることによって、生徒たちが幼児と応答しながら、活動的で協働的な学びのプロセスを組織していた。このような拡張的な学習が中学生の幼児と関わり合う資質と能力を高めていることが分析できた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680571396352
  • NII論文ID
    130005287050
  • DOI
    10.11549/jhee.59.0_93
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ