世界のペリドート産地と中国の2つの鉱山状況

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抄録

◇エジプト、セント·ジョンス島のペリドート鉱山<BR>エジプト領の紅海のセント·ジョンス島から良質石が産出していたことは、歴史的にも良く知られている。旧称ゼベルゲットなどの種々の名で呼ばれていたが、面積約5平方kmのこの島は、南部の岩塊のみに鉱脈が存在している。長い世紀の間忘れられた存在であったが、1905年の再発見以後良質石の産地として注目されて、盛んに採掘が行われたが、1958年以後は採鉱は休止し、鉱山は廃墟となって歴史的な意義を残すのみである。<BR>◇ミャンマーのペリドート産地<BR>ミャンマーは世界的にも良質石の供給国として重要な地位にある。宝石類の産地として知られるモーゴク町の北北西のパヤン·ガン地区チャウポン山の北斜面で、ペリドートが採掘されている。ミャンマー産石は、中世以降第2次世界大戦まで世界市場に供給されていた。1962年の軍事政権樹立後は鉱山は国有化されていたが、現在ではその採鉱は政府との合弁会社などによって行われている。1980年代に入って、従来からの鉱山の生産は低下してきたが、しかしごく最近に至って、旧鉱山に近い傾斜面に新鉱山が発見されて採鉱が開始されて、品質良好な石の産出が報告されている。<BR>◇アメリカ、アリゾナ州のペリドート産地<BR>現在アメリカは世界におけるペリドート宝石の生産·供給の最大手の国である。その産地はアリゾナ州、ジラ郡のアパッチ·インディアン保護区内のサン·カルロス地区にある。玄武岩台地(メサ)の豊富な鉱床は居住のアパッチ族のみが特別の採鉱許可権を与えられていて、彼らによる手工具主体の原始的方式によって散発的に生産されている。余り知られていないが、アメリカにおけるもう1つの産出地として、ニュー·メキシコ州のキルポーン·ホールがある。火山クレーターよりの産出であり、商業的な供給産地ではない。またよく知られているハワイ産のペリドートは、実際は全て小粒状つまり砂状の産出で、このグリーン·サンドは、ハワイ島の南部のマハナ湾のビーチのみで採取されている。<BR>◇パキスタン、コヒスタン地域のペリドート産地<BR>パキスタンにおいては1994年に、同国北部のコヒスタン地域で宝石種のペリドートが発見された。この新しい注目さるべき産出地はナンガ·パルパット山地区のサパトナラ(サムパットあるいはサプパットとも)の標高約4,500mの地点にある。地元民による採掘は、厳寒の積雪の多い地域のためにそのシーズンは、5月から10月の間である。同国と中国以外のアジア地域においては、ベトナムの南部と中央部の2ヵ所に産出があることが1995年に報告されている。<BR>◇その他の産出国<BR>アフリカのケニア、タンザニア、エチオピアおよびメキシコ、オーストラリアに産出があるが、いずれも商業的な原石産地といえるものではない。<BR>◇中国における2つのペリドート鉱山<BR>中国においては、1970年代末以降に重要な2つのペリドート鉱床地帯が発見された。その1つの河北省の張家口地域のペリドート鉱床は、北京の北西約180kmに位置している。産出地はその付近一帯の総面積1,600平方kmの広大な地域に広がっていて、その主な採鉱地区は、中央の万全、北東部の崇礼、北西部の尚義の3ヵ所である。この地域は軍事秘密基地であることを理由として、立入りに特別の許可が必要とされている。それゆえ、この地域のペリドート鉱床や採鉱の詳細な情報はほとんど得られていない。より新しい重要なペリドート鉱床は、吉林省の吉林の南東120kmの白色山鎮内に位置している。この鉱床は1989年に発見されて、1990年より小規模な採掘が開始され、1995年に本格的な鉱山として採鉱がスタートした。現在操業中の白色山鉱山においては、標高791mのために「791高地」と呼ばれる玄武岩台地(メサ)の平らな頂上で採鉱が行われている。露天掘りの中国で唯一の機械化採掘の宝石鉱山で、採鉱夫100名以上を擁して最大な宝石鉱山でもあるといわれている。旧満州の寒冷地で、採鉱シーズンは5月から10月の間である。良質石が産出していて目下注目されている産地である。

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  • CRID
    1390282680571531392
  • NII論文ID
    130006961940
  • DOI
    10.14915/gsj.24.0.13.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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