中学生における「3・1・2弁当箱法」の学習効果

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書誌事項

タイトル別名
  • Learning Effect of "Lunch Box Diet Method" in the Junior High School
  • Confirmation through the survey tests on the student's food life attitudes conducted twice in 2 years
  • 2年後の食生活に関する意識調査を通して

抄録

【目的】 中学校技術・家庭科の食生活学習において,栄養素の働きや食品の栄養的特徴を知り,1食分はもちろんのこと,1日に必要な食品の種類と概量を知ると共に,献立が考えられるようになることが求められている。しかし,中学生にとって栄養素と食品を結びつけることは容易ではなく,1日,あるいは1食に何をどれだけ摂取すればよいかを把握するための教材の吟味が必要である。 そこで,足立・針谷による「3・1・2弁当箱法」に着目した。これは1食に必要なエネルギー(カロリー)がほぼ弁当箱の容量(ミリリットル)に匹敵すること,主食・主菜・副菜の割合を3:1:2にすることでほぼ必要な栄養素が摂取できるとするもので,視覚で確認できる点が優れている。すでにこれまでにもいくつかの視点から「3・1・2弁当箱法」の学習効果を検討してきたが,本研究では,約2年前に学習した生徒の食生活に関する意識がどのように変容したかを明らかにするものである。【方法】 調査対象は山形市内のA中学校第3学年であり、有効回答数は157名(男子81名,女子76名)である。この生徒らは2年前(2010年)の1年生の時に13時間の食生活学習を行っており,そのうち6時間は「3・1・2弁当箱法」に関連する学習が含まれている。なお、調査対象者が1年生時の有効回答数は2010年の学習前(以下,学習前とする)が160名(男子83名、女子77名)、2010年の学習直後(以下,学習直後とする)は154名(男子79名、女子75名)であった。この生徒らに食生活に関する質問調査を実施した。調査時期は2012年4月である(以下,2年後とする)。なお,学習前(2010年4月)と学習直後(2010年10月)にも同じ質問紙で調査を実施している。自由記述の回答は,生徒の記述内容をKJ法により分類し,3回の変化を見る。【結果および考察】 「食事をするときに気をつけていること」の回答は,学習前では,しっかり噛んで食べる等といった「食べ方」に関する記述が多かったが学習直後には減少し,「バランス」に関する記述が大幅に増加した。2年後では「バランス」がやや減少し,「食べ方」とほぼ同率となった。「食事を作るときに気を付けていること」の回答は,学習前では「作り方」に関する記述が最も多く,次に「衛生面」に関することと「バランス」に関する記述が多かったが,学習直後では「バランス」と「おいしさ」に関する記述が大幅に増加した。2年後では「バランス」の記述割合は減少するものの第1位で,食事を作るときには栄養や主食・主菜・副菜のバランスが大事であると考えていることがわかった。「献立を立てるときの条件」の回答は,学習前では最も多かったのが「バランス」であり,他の記述内容に比べて突出していた。学習直後はさらに増加したが,2年後では学習前の割合と近似し,元に戻っていた。すなわち,献立を立てるときには栄養等のバランスが大事であるという認識が学習前からかなり持っていると言うことができる。「食事でバランスがよいとはどういうことか」の回答では,学習前は「食品」の種類や数に関することが最も多かった。学習直後にはやや減少するもののなお最高率であった。学習直後で次に多かったのは「主食・主菜・副菜」であり,「量」と「栄養」が続いた。2年後では「食品」に関する記述は大きく減少し,最も高率だったのは「栄養」に関する記述であり,2位は「主食・主菜・副菜」であった。 以上のことから,全体的に,学習前と比べて学習直後には授業内容が反映された記述が多かったが,2年経過して,割合は低下するものの「バランスが大事」であることが多く記述されたことやバランスがよいことの具体的な記述もみられ,視覚に訴えることができる「3・1・2弁当箱法」の学習効果とみることができる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680571556736
  • NII論文ID
    130005021642
  • DOI
    10.11549/jhee.56.0.84.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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