幼児の手指の巧緻性における年齢差と性差

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Difference based on sex and age of skillfulness in fingers /hands among kindergarten children

抄録

【目的】<br> 布を用いた製作および被服製作学習は、教育課程の変化や子どもたちのものづくり体験の減少などによる多くの課題を抱えている。子どもたちの手指の巧緻性の個人差についても、その課題要因の一つであるとして、これまで「糸結びテスト」を用いて実態把握を行ってきた。結果、手指の巧緻性の優劣が学習活動の遅速に影響していることを実証し、子どもの手指の巧緻性の把握は指導上、重要な基礎資料であることを指摘してきた。しかし、「糸結びテスト」は計測条件が単純で利用しやすい方法ではあるが、操作が低年齢には適さず、小学校5年生以上を対象とした研究に留まっていた。手指の巧緻性の優劣が生ずる要因に多様な遊びや生活経験が関与していることはこれまでの研究成果で確認できたが、子どもの成長過程における個人差や性差の発生時期・要因については課題として残されていた。本研究では、幼児に適した計測方法を検討し、幼稚園の3歳児学年から5歳児学年までの手指の巧緻性の発達傾向を明らかにし、年齢差、男女差の発生要因を検討する基礎資料を得ることを目的とした。<br> 【方法】<br> 幼児の手指の巧緻性を測定する方法として4種のテストを開発し、実施した。①おりがみを四角に折る…15cm四方のおりがみを長方形に折るまでの時間と頂点同士のズレ量を測定する。②マグネット移し…5個×8列の計40個のマグネットを利き手のみを使用して反対側のボードに移動させる。60秒以内に移動できたマグネットの個数、又は40個すべて移動できた時の時間を計測する。③ひもをとく・結ぶ…手本を見せた後ひもをとく・結ぶのにかかった時間を計測する。④ビーズ通し…1分間でビニール管に通せたビーズの個数を計測する。対象は国立大学附属幼稚園の3歳児学年47名、4歳児学年51名、5歳児学年49名の計147名。調査時期は2011年7月および10月である。<br> 【結果】<br> (1)年齢差:年齢差は学年と月齢の両面から検討した。 すべてのテスト項目において、学年が上がるにつれて成績が上昇し、男女共にほぼすべての項目で学年間の有意差が認められた。今回の調査対象では特に3歳児学年と4歳児学年、および男児について年齢の差が顕著であった。各テスト項目の成績と月齢の相関性では、マグネット移しとビーズ通しのテスト項目において月齢との相関係数が高く、指先でつまむ作業における年齢差の大きさが明らかとなった。しかし、各学年の中での月齢と各項目の成績の相関係数が低く、幼稚園入園後の集団生活の中で、共通した遊び経験をすることによって月齢差を縮小していることが推測された。<br> (2)男女差:3歳児学年と4歳児学年では、すべての項目において女児の方が有意に成績が高くなった。しかし、5歳では男児の方が成績が良い項目が見られるようになり、男女差が縮小する傾向が見られた。これまでの小学校5年生から大学生までの「糸結びテスト」による調査結果では、年齢にかかわらず女子が優位であり、男女比もほぼ一定の割合が見られた。この結果の相違については、今回の調査対象者の特徴であるのか、又は幼稚園という集団生活の場での共通経験によるものであるのかなど、今後の研究課題として追究する予定である。<br>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680571742208
  • NII論文ID
    130005021504
  • DOI
    10.11549/jhee.55.0.53.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ