新学習指導要領に準拠した小・中学校家庭科の被服学・衣生活に関わる語句分析

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  • Analysis of technical terms and words related to clothing sciences employed in textbooks of Home Economics for compulsory education

抄録

1.目的 <br> 新学習指導要領における衣生活領域での指導目標及び内容は,大きく「着用(選択)と手入れ」及び「製作」に分けられており,布の構造や性質については各項目において語句は散見されるが,明確に記されていない.しかし,布及び繊維について知る事は,系統的な学習に必要不可欠であり,全ての基本となると考えられる.そこで,本研究では,家庭科衣生活領域において,より系統的な学習内容を検討・構築する際のデータとして,新学習指導要領に準拠した教科書の内容構成について分析することとした.<br><br>2.方法<br> 小・中学校の新学習指導要領及びそれに準拠した教科書5点(小学校用2点,中学校用3点)における衣生活領域の内容について,学習指導要領におけるキーワードを基に分類を行い,指導要領と教科書の比較を行った.さらに,教科書4点中(小学校用2点,中学校用2点)の衣生活領域に関連する語句について,重複を含め,全てを抽出した.そして,日本家政学会の定義する被服に関する専門分野分類表に準じて,抽出された用語の属性を9つに分類した.なお,属性は,当該用語の出現する教科書中の目次に基づいて分類することとした.<br><br>3.結果及び考察<br>(1)新学習指導要領と教科書の記載内容<br> 小・中学校の学習指導要領の衣生活領域の内容を,衣服の「着用(着方・働き)」「手入れ(洗濯・補修・収納)」「選択(入手)」「関心(活用)」の4分野に分類した.これに,「環境・消費(処分)」と「布・糸(性質)」を加えて6分野とした.さらに,この分類に基づいて,対象教科書より抽出された記載内容や語句の該当分野をまとめた(本稿では分類表は割愛する).<br> その結果,布に関しては小学校学習指導要領では製作で多く用いられており,中学校学習指導要領では「手入れ」の分野で主に取り上げられていることがわかった.小学校では,「布の種類」や「材料の布」等の記載はあるが詳細は記されていないにも関わらず,教科書では織物,編物,フェルト等の記載や,綿,ポリエステル等の語句がみられる等,布に関する系統立った学習の必要性が伺えた.<br>(2)教科書における関連語句の出現率<br> 教科書中の内容構成について,関連語句の出現頻度を分析した結果,小・中学校用教科書より抽出された関連語句数は,計3,644語であった.その内訳として,小学校は1,522語であり,中学校は2,122語であった.<br> 上述どおりに分類した結果,小学校用教科書において最も高い出現率を示したのは,被服構成の分野であった.その出現率は,65.4 %と著しく高値を示した.次いで,被服整理・染色と被服衛生・生理の分野が,それぞれ16.3 %と12.1 %という出現率を示した.被服材料の出現率はわずか1.2 %であった.これより,小学校で取り扱う「布」は,着心地よりも,製作実習材料として主に記述されていることがわかる. <br>中学校用教科書においては,被服整理・染色の分野が最も高い出現率,37.0 %を示した.次いで,衣生活分野の出現率が27.0 %の高値を示し,被服心理と被服構成は同値である11.6 %であった.中学校では日本文化に関連した事項も取り扱うため,服飾文化・服飾史分野の出現率は7.3 %となった.被服衛生・生理と被服材料の各分野の出現率は,同値の2.3 %であった.これより,中学校では,自立した衣生活に向けた衣服の洗浄や環境問題と関連させた消費に関わる事項が,主に記述されていることがわかる.<br> 衣生活領域では,衣生活の自立に向けた教育が目指されている.その指導内容は,幅広いものの,教科書中で主に記述されている指導内容分野が明らかとなった.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680571760384
  • NII論文ID
    130005021515
  • DOI
    10.11549/jhee.55.0.63.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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