中学校家庭科被服学習における生徒の被服関心・自尊感情形成評価への心理測定尺度の適用の試み(第3報)

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タイトル別名
  • Attempt of psychology measurement standard application to the student's cloth's concern and self-respect formation evaluation in junior high school home economics course clothes study

抄録

[目 的-本継続研究の目的と本発表の位置づけ-]<BR> 平成20年版学習指導要領中学校「技術・家庭科(家庭分野)」に示された被服学習は、教科としての目標を達成する上で、二つの課題を有している。第一は、被服学習の目的「学習者と被服との関わり」を学ぶ内容が欠落し、第二は、被服学習が教科目標である「家庭生活を営む力の育成」を通して、学校教育の目的である学習者の「人格形成」にどう関わるのかを客観的に評価する方法が存在しないということである。本継続研究は、第一の課題解決のために岡山大学教育学部附属中学校(以下、「附属中」と称す)で取り組まれている授業開発研究「外観・被服・私」を踏襲し、心理測定尺度の適用により第二の課題を検討することを目的とした。以上の問題意識に基づき、平成20年度例会では、被服学習による生徒の人格形成評価へ適用する心理測定尺度の選定とプレテストによる信頼性の評価により、9下位尺度58項目で作成した心理測定尺度「被服と私」に衣生活の現状を把握するための「衣生活に関するアンケート」を加えて作成したCI&I(Clothing Interest & I)について報告した。本発表では、被服学習評価へのCI&Iの適用とその結果から、中学校家庭科被服学習における生徒の被服関心・自尊感情形成評価への心理測定尺度の適用の有効性と今後の課題について報告したい。<BR> [方 法-被服学習評価へのCI&Iの適用と分析-]<BR> (1)附属中における被服学習の実践とCI&Iの実施;附属中の平成20年度家庭科年間指導計画に基づき、第1学年の生徒(男子100名・女子100名)を対象に、被服学習の前後(6月と9月)にCI&Iを実施した。<BR> (2)分析枠組み;1)分析要因 「被服と私」の結果を考察するに際し、9下位尺度で測定できる生徒の心理傾向に着目し、次のA~Iの分析要因枠組みを設定した。(「学習者自身」の心理傾向を測定する要因:A.自尊感情、「学習者と被服の関わり」から生じる心理傾向を測定する要因:B.個性・C.心理的安定感・D.似合いの良さ・E.同調・F.快適さ・G.理論づけ・H.慎み・I.対人的外観・J.被服関心度(B+C+D+E+F+G+H+I))、2)理論的平均値 A~Jは、全て5件法で回答を求めるものであることから、生徒の心理傾向の程度を判断する基準として、質問項目に生徒が「どちらでもない(3点)」と回答した時に得られる下位尺度の合計点を「理論的平均値」と定義し、分析要因毎に用いることとした。<BR> (3)分析項目;SPSSを用いて分析した結果、被服学習の前後に実施したCI&Iの信頼性が評価されたため、(2)に示す分析枠組みに基づき、1.生徒全体、2.男女差、3. AとB~J間の関連性、に関する分析を行った。<BR> [結 果-CI&Iの結果にみられた生徒の心理傾向の変化-]<BR> 被服学習前のAの生徒全体の平均点は、理論的平均値均値をやや上回っていた。B~Jの全ての平均点は理論的平均値を下回っていたが、FHIGには、低いながらも価値を認めようとしていた。また、BCDEIで女子の方が男子よりも有意に平均点が高く、女子は被服のファッション的な役割を重視する傾向がみられた。この結果は、「アンケート」から把握された“生徒は、衣生活の多くを未だ家族に依存し、「感覚的」に自分の衣生活を営んでいるが、標準服を「きちんと着る」ことを心がけて学校生活を送り始め、「なぜ、そうしなければならないか」という理由を知りたがっている”傾向と一致した。しかし、生徒のAとB~J間には、相関をみることができなかった。これらの結果は、被服学習後も変化がなく、被服学習の前後でA~Jの平均値には殆ど差がみられなかった。また、生徒のAとB~J間にも相関はみられなかった。<BR>  この原因を究明するために、高校生・大学生に実施したCI&Iを分析すると、B~Jの平均点は中学生より高くなっており、AとB~J間では「全く相関がないとはいえない」という結果が得られた。以上から、本研究で選定した「自尊感情尺度」は、被服学習による生徒の人格の変化を測定する尺度としては不適切であり、「被服関心度質問表」は、発達段階的に中学生の心理傾向の変化を測定できなかったと考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680571932928
  • NII論文ID
    130006962237
  • DOI
    10.11549/jhee.52.0.84.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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