日本とフランスにおける大学生の食意識及び食習慣の比較・検討

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タイトル別名
  • Comparison the dietary consciousness and habits between the Japanese university students and the French university students

抄録

【研究目的】 現在日本では偏った栄養摂取、朝食欠食など食生活の乱れや肥満・痩身傾向が問題となっている。食におけるこれらの問題に対して様々な対策がとられているが、その一つとして2008年9月に改定された中学校学習指導要領総則からも、より一層の食教育の充実が求められており、中でも家庭科の担う役割は大きい。<BR>  一方、フランスでも日本同様の食に関する乱れが問題となっている。そのような現状を鑑み、現在、様々な方面で食教育が行われており、それらは日本の食教育にとっても非常に参考になるものである。<BR>  そこで本研究は、日本とフランスの大学生の食生活に関する意識・実態の把握及び両国の食教育内容の検討を行い、家庭科教育におけるよりよい食教育カリキュラムを追究することを目的とした。<BR> 【研究方法】 調査対象は、日本の国立大学2校450名とフランスの大学生50名であった。両国の比較においては、日本人大学生のアンケートを等間隔サンプリングにて抽出し、数を合わせて行った。調査期間は2007年7月~2009年4月で、質問紙留置法により、食べることへの興味、調理の興味・技術、五感を意識した食生活等、食生活全般に関する25項目を、また、記述式及び面接によって豊かな食生活に関する考え等を調査した。<BR> 【結果】 日本人大学生へのアンケート結果では、「食べることに興味を持っている」「食べるときに味を気にする」という項目において全25質問項目において最も高い平均値となっており、食生活を営む際、これらを強く意識していることがわかった。全体を通して、「~を気にしている」「~が好きである」という質問項目の平均値に対して「~がわかる」「~ができる」という質問項目の平均値のほうが大幅に低く、食に興味を持ちながらも調理や栄養バランスに自信を持てない実態が明らかとなった。また、数量化_III_類により「健康的な食生活への意識」「食生活文化」「五感への意識」「調理への興味」の4つにグルーピングすることができた。このグルーピングの結果と各グループ平均値を検討してみると傾向が類似しており、両者間に整合性が認められた。<BR>  フランス人大学生へのアンケート結果より、全質問項目の中で最も高い値が「食べる時に味を気にする」という項目であり、味に対して非常に高い意識を持っていることが明らかとなった。一方、「自分が一日に必要な栄養素やカロリーがわかる」という質問が全項目中、最も低い結果となった。「食生活において重要だと思うこと」という記述問題では、野菜、果物をたくさん食べる、という意見が幾つか見られたが具体的に自分がどのくらいの栄養、カロリーが必要かに関してはわからない学生が多い結果となった。また、日本人大学生には「楽しく」「誰かと一緒に」等の内容が多く見られたが、フランス人大学生にはほとんど認められなかった。しかし、「食事の時間をきちんととる」という内容が幾つか認められ、食事時間に対する意識の高さがうかがえた。<BR>  日仏大学生のアンケート結果を比較すると、全体的な値は大差がないのに対し、個々の項目の値にばらつきが見られ、約半分の12項目において有意な差が認められた。また、フランス人大学生の方が意識が高い項目(12項目)と、日本人大学生の方が意識が高い項目(13項目)が異なることが明らかとなった。両国とも共通して低い項目は「自分が一日に必要なカロリーや栄養素がわかる」であり、それぞれの国における今後のカリキュラムの検討が必要な結果となった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680571950080
  • NII論文ID
    130006962255
  • DOI
    10.11549/jhee.52.0.77.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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