家庭科教員養成教育における協同学習の導入

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タイトル別名
  • Effects of collaborative learning for home economics teacher training
  • Practice of Universty in Finland
  • フィンランド教員養成大学での実践から

抄録

目的:今日わが国では,子どもたちの対人関係スキルやコミュニケーション能力の低下が問題視されている。このことは,新指導要領でも,「問題解決的な学習の一層の充実」とともに「他者とかかわる力の育成」が提唱され,学校教育現場では幼稚園から大学まで,いわゆる参加型の授業や協同学習(collaborative learning)への取組みが盛んである。子どもたちの協同学習スキルを向上させるには,まず,教師が協同学習スキルを獲得,向上させる必要があると考える。 OECDのPISA調査において,最上位に位置しているフィンランドは幼児期から協同学習を取り入れている国であり,家庭科教育の目標にも,「協力的な態度」,「集団で行動する方法の学習」が掲げられている(2004年版‘national core curriculum for basic education’)。また,教員養成教育においても協同的学習形態が多く用いられているということである。 そこで,本研究では,フィンランドの教員養成大学での家庭科教育関連科目における協同学習の実践と成果について考察し,わが国の家庭科教員養成教育に資することを目的とする。<BR> 方法:<BR> 1)家庭科教員養成コースを持つ国立2大学であるヘルシンキ大学とヨエンスー大学において,家庭科教育法関連科目の中で,「ディスカッション型」と「実習型」の2種類の形態の協同学習を実施する。<BR> 2)実施後受講学生に質問紙を用いたアンケートまたはインタビュー調査を実施し,学習成果を確認する。<BR>  〈ディスカッション型協同学習〉<BR> _丸1_ペア型(2人×4組)・・・相手の集団の中での役割を観察,報告<BR> _丸2_問題解決型(11人)・・・おりがみの花の実物から折り方手順解明<BR> _丸3_交流型(11人)  ・・・授業DVD視聴後質疑応答,助言アンケート          (DVDの題材:中学校(食物)「1日分の献立作成」<BR>) 〈実習型協同学習〉<BR> _丸4_製作(17人)ふくろ作り・・・手縫い,巾着型<BR> _丸5_調理(6班17人)ハンバーグ,サラダ,チョコレートムースなど<BR>          (小グループ調理実習法についてのインタビュー)<BR> 期間: _丸1_~_丸4_2007年12月10日~14日<BR> _丸6_2008年10月23日~24日<BR> 対象:_丸1_~_丸4_国立ヘルシンキ大学教育学部家庭科専攻2年生11名<BR> _丸5_国立ヨエンスー大学教育学部サボンリンナ分校家庭科専攻1年生17名<BR> フィンランド主導:講義_丸1__丸2_(見学),実習_丸5_(参加)<BR> 日本主導: 講義_丸3_,実習_丸4_<BR> 結果と考察:2年間2大学で5種類の協同学習が実施された。_丸1_は40分のディスカッションの中で,ペアになった相手の集団内での役割を見い出すといった社会的判断力を要求される学習であり,_丸2_は折り紙の実物をほどくことにより,折った手順を皆で解き明かす。それらの過程で,学生たちの価値観や思考力,判断力を養う点で評価できる。_丸3_は,共通の授業映像(資料)を媒体にしてグループ内での意見交流を行う方法である。言葉の壁を越えて理解できるよう,フィンランドと日本に共通の学年(中1)と題材「1日分の献立作成」を選択し流れを解説した。20分程度のディスカッションの後,11人中6人の学生から質問が,また,全員から豊富な助言が呈された。発想の巾が広く活動を伴う助言が多いのが特徴である。_丸4_の「ふくろ作り」は,わが国の小学校教材である。和柄のハンカチや手ぬぐいを提供した。グループによる協同学習をしながら縫った学生でも平均45分要した。_丸5_は,3~4人による小グループの問題解決型調理実習で,調理するものは班ごとに異なる。調理のレシピを手掛かりに班員の総力を挙げて作り上げる。読解力と他者と協同する力の養成を狙った指導法といえる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680571953280
  • NII論文ID
    130006962260
  • DOI
    10.11549/jhee.52.0.75.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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