食品に含まれる鉄分の可視化に関する授業実践

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Teaching practice that visualize mineral iron in the food stuff

抄録

【目的】<br> 新学習指導要領の総則に,「学校における食育の推進」が明確に位置付けられ,家庭科の改善の基本方針の中にも,「食育の推進を図る」ことが記載された。家庭科は従前から食生活に関する学習を扱っているが,今回の改訂により,小学校・中学校・高等学校をとおして,さらなる内容の充実が図られている。家庭科は食生活を家庭生活の中で総合的に捉えることができることから,教科の特質を生かした指導をしていく必要がある。<br> 食生活に関する学習の中で,栄養素の種類と働きについては,基礎的・基本的な内容であり,小学校・中学校・高等学校のすべての学校種で学習する。五大栄養素の中の無機質は,体の構成や生理作用の調節に欠かせない栄養素であるが,体内で合成することができず,食事によって体内に取り入れる必要がある。しかし,無機質は食品に微量にしか含まれていないため,どの食品に多く含まれているのかを実感するのは難しく,無機質そのものを視覚的に認識することができない。そこで,無機質をより理解しやすくすることを目的として,食品に含まれる鉄分の可視化を試みた。(第55回大会にて報告)本研究では,その教材を用いた学校教育現場での授業実践について報告する。<br>【方法】<br> 平成24年9月~10月に,県立I高等学校1年生8クラス計318名(男子168名,女子150名)を対象とした「家庭基礎」の授業の中で,鉄分の可視化に関する実験を取り入れた実践を各クラス1時間行った。授業の目標は,(1)無機質の特徴を理解すること,(2)実験をとおして食品に含まれている鉄を実感し,鉄のはたらきを理解すること,であった。授業内容は,開発教材である鉄分を多く含む食品を灰化したものがネオジウム磁石に付着する様子をスライドで見せ,その後に2種類の実験を行い,鉄のはたらきについて確認をした。実験内容は,ふるいにかけた青のりをネオジウム磁石に反応させる実験と,紅茶と鉄の反応を視覚的に比較する実験である。授業はワークシートを用いて行い,授業の前後にアンケート調査を実施して授業の効果を検討した。<br>【結果】<br> アンケートの有効回答が得られたのは309名(有効回収率97.2%)であった。事前アンケートによると,これまでに家庭科の授業で実験の経験があると回答した生徒は,わずか14名(4.5%)と少なかった。事後アンケートでは,実験に対して興味をもって取り組めた230名(74.4%),今回の実験の手順や方法が理解できた253名(81.9%),今後も実験を取り入れた授業を受けてみたい259名(83.8%)と肯定的な回答が多く見られた。実験を取り入れたことで,わかりやすかった,グループで楽しく参加できた,興味をもつことができた等の記述があり,今回の授業実践での実験が生徒に受け入れられたことがわかる。<br> 事前アンケートで,毎日の食事の中で食品に含まれている栄養素を実感することがあるかの問いに対して,254名(83.3%)がないと回答していたが,事後アンケートでは,今回の実験で食品の中に鉄が含まれていることを実感することができたと230名(74.4%)に肯定的な回答が見られた。しかし,青のりのネオジウム磁石への反応については,生徒が期待しているほどの多量な付着が見られなかったこともあり,よく理解できなかった生徒もいることから,さらなる工夫が必要である。<br>参考文献<br>前田英雄・速水多佳子,「食品に含まれる鉄分の可視化に関する教材開発と授業実践」,日本家庭科教育学会第55回大会研究発表要旨集pp.74-75

収録刊行物

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680571998208
  • NII論文ID
    130005021567
  • DOI
    10.11549/jhee.56.0.16.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ