アクティブ・シニアとの世代間交流活動による中学生への効果

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タイトル別名
  • The effects on junior high school students from an intergenerational activity with active seniors

抄録

【目的】<BR> 家庭科教育におけるエイジング学習プログラムを構築するために、これまでは「高齢者の主たる生活の場(福祉施設)において、若年世代(中学生)がケアを必要とする高齢者を支援する」類型の世代間交流活動と連携させてエイジングを学ぶ授業を構想し、実践を通して学習効果を検討してきた。今回は「生徒の主たる生活の場において、元気な高齢者(アクティブ・シニア)が中学生を支援する」類型の世代間交流活動と連携したエイジング学習プログラムを開発するための基礎的資料を得ることを目的として行った調査について報告する。<BR><BR>【方法】<BR>(1)長野県佐久市内の中学校3年生66名を対象として2008年10月初旬、無記名質問紙法による集団調査(事前調査)を実施した。調査内容はエイジングクイズ、加齢に対する意識、高齢者との交流について、生活への向き合い方などである。<BR>(2)2008年10月16日、「総合的な学習の時間」における世代間交流活動(老人会の方々との交流会)の参与観察を行った。<BR>(3)交流会終了直後、まとめの時間に事前調査とほぼ同内容の事後調査を実施した。<BR><BR>【結果】<BR>(1)エイジングクイズの正答率は、6項目のうち4項目で事後調査が事前調査に比して有意に高い結果となった。生徒の得点率も事後調査で有意に高くなった。平均得点は事前調査が2.73、事後調査が3.52で0.79ポイント上昇した。<BR>(2)加齢に対する意識では「知識や経験が豊かになっていく」、「より自分らしくなっていく」、「社会生活が開けていく」の3項目において、「そう思う」との回答が事前調査に比して事後調査では有意に高くなった。<BR>(3)交流会は「生徒の主たる生活の場」(学校)で実施され、活動の内容は囲碁、そば作り、民踊、昔の話、詩吟の5種類であった。交流対象の高齢者およびサービスの方向性は、いずれも「アクティブな高齢者が生徒を支援する」類型に区分される。しかし実際の活動では、高齢者の話を傾聴するもの、解説やアドバイスによって生徒主体で取り組むもの、体を動かしたり唱和したりして一緒に行うものなど、関与の仕方には違いがある。そこで、事後調査結果の活動内容別による分析を試みた。その結果、エイジングクイズおよび生活への向き合い方に対する影響を見出すことはできなかったが、加齢に対する意識では「年をとることは怖い」、「物事を柔軟に考えにくくなっていく」、「社会生活が開けていく」の3項目において有意差が認められた。<BR> アクティブ・シニアとの世代間交流活動は、生徒がエイジングを理解する一助となり、特に加齢に対する意識をプラスに変化させることにつながっていた。さらに、体を動かして一緒に行う内容においてその傾向が高い。しかし、生活に対する向き合い方には顕著な効果を認めることができなかった。家庭科教育におけるエイジング学習は、生徒が自分自身の現在の生活を振り返って課題を見出し、エイジングの視点に基づいて考え、実践できる能力の育成に資するものでなければならない。今後は、この類型に区分される世代間交流活動の内容や方法、位置づけを含めて授業を構想・実践し、学習効果を検討していく。<BR> なお、本調査は平成20年度科学研究費補助金基盤研究(C)20530797の一部である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680572064768
  • NII論文ID
    130006962401
  • DOI
    10.11549/jhee.52.0.66.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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