アクティブ・エイジングを志向した食生活の学習

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タイトル別名
  • Study of dietary life that intend active ageing
  • : at home economics education in junior high school
  • ―中学校家庭科において―

抄録

【目的】<BR> 他者とのかかわりによって自己および現在の生活を再認識し、人や社会とのつながりを構築するとともに、これからの生活を展望し、生涯にわたってよりよい生活を追求していく主体的生活者を育成するためのエイジング学習プログラムを、家庭科教育において開発することが本研究の目的である。そのために、2009年には「生徒の主たる生活の場(学校)でアクティブ・シニアが中学生を支援する」類型の交流活動と連携させて「これからの生活を見通しながら、アクティブ・エイジングに向けて今の自分にできることを考える」授業を実施し、一定の学習効果を得ることができた。しかし、身近な人から地域・社会へと視野を広げていくことが、やや困難であった。そこで2010年は同じ類型の活動と連携させ、食生活の領域で「現在の生活を省察して課題を見出し、これまでに学習したことを活用して解決方法を考えることにより、アクティブ・エイジングの実現をめざす」学習を構想し、授業実践を通して効果を検討した。<BR>【方法】<BR>(1)長野県佐久市内の中学校1年生68名を対象として2010年10月初旬、無記名質問紙法による集団調査(事前調査)を実施した。<BR>(2)2010年10月15日、「総合的な学習の時間」における世代間交流活動(老人会の方々との交流会)の参与観察を行った。交流活動は、生徒が囲碁、そば作り、民踊、昔の話、詩吟のいずれかに参加する形態で実施された。<BR>(3)交流会終了直後、まとめの時間に事前調査とほぼ同内容の事後調査を実施した。<BR>(4)2011年3月14日、「これまでの自分・これからの自分~食生活の課題~」を題材とした授業を実践した。本時のねらいは「交流した高齢者を通してアクティブ・エイジングについて知るとともに、自分自身がエイジングの主体であることを理解する」、「今の自分の食生活をふりかえって課題を見出し、解決するために学習したことを活用して、自分にできることを考える」である。はじめに交流会をふり返って高齢者に対する意識の変容を確認し、アクティブ・エイジングの条件を整理する。この段階で中学生自身もエイジングの主体であることを理解させる。次に、今の自分の食生活から課題を見出し、これまでに学習したことを活用して解決方法を考える展開とした。<BR>(5)ワークシートおよび授業後に行ったアンケート調査から、学習効果を検討した。<BR>【結果】<BR>(1)祖父母以外の高齢者と交流した経験のある生徒の割合は77.9%であった。<BR>(2)事前調査と事後調査で実施したエイジングクイズの正答率は、6項目のうち5項目で事後調査の方が高い結果となった。平均得点は事前調査が3.206、事後調査が3.781で、有意に高くなった。<BR>(3)事前調査と事後調査で加齢に対するイメージの変化をみると、「知識や経験が豊かになっていく」と「より自分らしくなっていく」の2項目において、「そう思う」との回答が事後調査で有意に高くなった。<BR>(4)学校での交流会以外に高齢者と交流する機会があった場合、「積極的に参加したい」との回答は、事前調査の7.4%に比して事後調査では20.3%となり、12.9ポイント増加した。<BR>(5)交流活動の前後では、生徒自身の生活に対する向き合い方において、顕著な変化はみられなかった。<BR>(6)アクティブ・エイジングのための食生活学習に対して「関心をもてた」と回答した生徒は84.9%であった。授業によって生徒は、自分自身がエイジングの主体であるという自覚をもつとともに、アクティブ・エイジングにとって中学生である現在の生活が重要であると認識することができた。食生活の課題と解決方法についても、多様な視点からより具体的に考えることができていた。<BR> なお、本報告は平成22年度科学研究費補助金基盤研究(C)20530797の一部である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680572180352
  • NII論文ID
    130006962522
  • DOI
    10.11549/jhee.54.0.55.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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