小学校家庭科ガイダンス教材としてのデジタル絵本の開発

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タイトル別名
  • Developmento of a digital picture book as a teaching material for introduction to elementary school home economics education
  • Development and evaluation of prototype
  • ~試作の開発と評価~

抄録

_I_研究の背景・目的<BR> 今年度(平成23年度)は新小学校学習指導要領の完全実施である。その中の家庭編改訂の要点に、2学年間の学習の見通しを立てさせるためのガイダンスに関する内容が新しく設定されている。 そこで5年生が初めて知る家庭科はどのようなことを学ぶのか、また初めて学習する教科に児童が興味関心を持ち、積極的に取り組むことができる授業開きの大切さを考慮し、ガイダンスに使用できる家庭科導入教材の開発を本研究の目的とした。<BR>_II_ガイダンス教材の開発<BR>(1)教材開発の視点 教材開発のポイントとしては小学校学習指導要領第1章総則より、各教科の指導の共通点である、言語活動とICT活用の充実を図るという2点とした。言語活動では中学年・高学年・あるいは中学生にたいして絵本の読み聞かせ実践研究が数多く報告されている点を参考にし、教材を絵本とした。ICTの活用については教科書会社2社(東京書籍・開隆堂)が、デジタル教科書を制作中であることに鑑みて教材をデジタル化した。以上の2点からガイダンス教材としてデジタル絵本を作成した。<BR>(2)デジタル絵本の特長 1,特別な支援を必要とする児童はもちろん、全ての児童にとって分かりやすく興味をもって楽しく授業に取り組めることができるよう、視覚を重視した教材。2,教師にとっては、操作が簡単で使いやすい教材。3,「家庭科」の内容は身近にあり親しみやすいという感覚から、さらに具体的なイメージを持って、2学年間の見通しを持たせられる教材。4,教材はプレゼンテーションソフト(パワーポイント)で制作。<BR>(3)デジタル絵本の内容と構成 教材開発の視点に基づき、ガイダンス教材の試作を考案した。『家庭科かくれんぼ』という題名で絵本を制作した。ストーリーは家庭科を身近に感じられるよう、日常のどこにでもあるお話とした。この絵本の中で「家庭科」に該当する箇所に、指導要領の項目に対応した、具体的な学習内容を示す画面を作りリンクさせた。リンク画面はどの教科書にも活用できるように、オリジナルの写真と動画から作成した。授業はこの絵本から児童が「家庭科」に関する内容を探し、リンク画面で確認しながら、2学年間で学ぶ家庭科の内容を知り、見通しを持たせる展開とした。指導案はプロジェクタ活用版、電子黒板活用版の2種類を想定した。<BR>_III_ガイダンス教材の試作の評価<BR>(1)方法 小学校家庭科担当教員(65名)が集まる会場で、教材の説明をしアンケートを回収した。<BR>(2)結果 小学校家庭科担当教員56名のアンケートを回収した(回収率86%)。結果は、ガイダンス教材使用希望について、デジタル化されたものを使用したいが46件(内、紙媒体と併用したいが5件)、紙媒体のみを使用したいが0件、使用したくないが0件、検討するが9件だった。またICTを活用した授業をしたことがなく、プレゼンテーションソフトの使用経験がない教員10名中7名が、デジタル化された教材を使用したいと回答した。教材の改善点については自由記述欄を設けたところ絵本画面、リンク画面、指導案のそれぞれに指摘があった。絵本に関しては「適切な文字の大きさと文章量の検討」7件、「音声」3件、「ジェンダー視点」1件、「ゲーム感覚」1件の記述があった。リンク画面に関しては「リンクを貼る箇所の検討」1件、「既習項目に単元名を入れる」1件あった。しかし改善点の項目にもかかわらず「効果的」、「インパクトがあった」といった記述が多かったのは評価できる点である。指導案に関しては、「発問の仕方に工夫がいる」が1件あった。<BR>_IV_まとめと今後の課題<BR> 試作に関しては、ICTを活用した授業やプレゼンテーションソフトの使用の有無に関わらず、デジタル化を希望した教員が多かったことなど、教材の特長が反映されたものと考えられ、おおむね良い結果であった。しかし、絵本やリンク画面の改善点の指摘があったので、今後は修正し授業を実践する。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680572260608
  • NII論文ID
    130006962619
  • DOI
    10.11549/jhee.54.0.79.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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