ふれ合い体験の内容による中学生の学びの特徴

書誌事項

タイトル別名
  • The Essence of Junior High School Students' Learning about Two Types of Experience in Early Childhood Education and Care
  • 異なる関わり方からの検討

説明

問題と目的<BR> 幼児とのふれ合い体験学習により、生徒が幼児に対して肯定的なイメージを持つことはよく知られている。今後は、ふれ合い体験学習の内容と学びの効果についての検討が求められる。<BR> 本研究では、ふれ合い体験の内容が、幼児と中学生がペアを組み自由に遊ぶ一対一の場合と、保育者主導によってグループで幼児と一斉活動を行う集団対集団の場合では、中学生の学びにどのような特徴が見られるのかを検討することを目的とする。どちらのパターンもふれ合い体験としてよく見られるものである。パターンの相違による学びの特徴を明らかにすることで、生徒の実態や授業の目的によってとるべきパターンを選択することができるとともに、事前事後の授業についても効果的に工夫することができるだろう。<BR> 研究方法<BR> 中学3年生6クラスのなかで、3クラスは一対一の体験を、3クラスは集団対集団の体験を行った。いずれも2時間続きの授業枠を使って、クラスごとに幼稚園でふれ合い体験を実施した。ふれ合い体験での学びを明らかにするために、生徒には体験後にナラティブを書かせ、その後、自分の書いたナラティブの内容で、「快い」「不安」「困惑」にあたるものに色を分けて下線を引かせた。各々の内容ごとに下線の数をカウントして、パターンごとの総数を出した。また、「意識して行った行動」「先生の関わり方」について気づいたことを別に書かせ、その内容について検討した。6クラスの中から、一対一の体験をしている1クラスと、集団対集団の体験をしている1クラスを選択して、分析の対象とした。<BR> 結果と考察<BR> ・ナラティブの内容について:一対一の体験をしているクラスと集団対集団の体験をしているクラスの順で、各々の内容の下線数を示す。「快い」は164本と124本、「不安」は77本と50本、「困惑」は36本と35本であった。一対一の体験の方が、「快い」も「不安」も多いことがわかる。ペアを組むことによって、幼児との関わりが密なものになり、「快い」経験が増えるが、同時に責任も感じることにより「不安」が増えるのかもしれない。<BR> ・意識して行った行動について:一対一の体験をしているクラスでは、幼児と関わるためにとった具体的な行動についての様々な記述が見られた。例えば「早く仲良くなるために手をつないだ」「園児の会話でちょっと大げさに反応する」「サッカーでは時々ボールをとらせた」「なるべく多く名前を呼ぶこと」。集団対集団の体験では、「話を合わせる」「優しい声で呼びかけた」「目線を同じくらいにする」などの記述が見られたが、ヴァリエーションは少なかった。<BR> ・先生の関わり方について:一対一の体験では、保育者が個々に子どもに対応することになるため、子どもの個性に応じた保育者の関わり方に言及する記述(「一人一人の性格を知っているため、その子にあった接し方をしていた」)や、子どもの主体性や自発性に任せていることに気づく記述(「園児すべての面倒をつきっきりで見るのではなく園児達一人一人にやらせる」)が見られた。集団対集団の体験では、保育者主導で集団を動かすことになるため、生徒はその様子を見て、集団から逸脱する子どもへの対応の仕方への気づきを記したり(「幼児が一人だけみんなと違うことをしても無理矢理仲間に入れようとせずに、何となく誘っていた」)、幼児の心のつかみ方(「幼児を怒って気づかせるのではなく何となく幼児に気づかせるようなことをしたりいうこと」「問いかけるような優しい口調で話していた」)を記していた。<BR> ・まとめ<BR> 体験(関わり方)によって、生徒の学びには異なった特徴が見られる。それを踏まえた上で、事前事後の授業を工夫することが必要になるだろう。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680572273792
  • NII論文ID
    130006962637
  • DOI
    10.11549/jhee.54.0.85.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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