高等学校家庭科の履修と大学生・社会人の食意識・食行動との関連

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Relationship between the High School Home Economics Study and Food Consciousness/Behaviors of University Students / the Members of Society

抄録

<br>〈目的〉<br> 1994年度から必履修となった高等学校家庭科の食生活分野について,必履修前後に高校生であった大学生と社会人を対象に,家庭科履修の有無による食意識・食行動,食知識,調理技能などを調査することにより,高等学校家庭科履修の成果と課題を明らかにすることを目的とした。<br>〈方法〉<br> 2007年1月~3月に,大学生209名(男69,女140)と40歳未満の社会人120名(男96,女24)を対象に,家庭科履修の有無,家庭科の内容への役立ち感(期待感),家庭科の教科観(イメージ),食意識・食行動,食知識,調理技能について,自記入式調査を実施した。回収後,有効な329部(有効回収率97.3%)について,統計解析ソフトSPSS11.5Jを用いて分析した。統計的な有意差の検定は,χ²検定を用いた。<br>〈結果〉<br> 1対象者の年齢構成は,18歳~27歳237名,28~39歳92名。男女比は,男165名,女164名であった。2高等学校における家庭科履修者は246名(75%),履修しなかった者(以下,未履修者)は83名(25%)であった。3家庭科学習の役立ち感(期待感)が高い順に「日常食の調理」61%,「食生活と健康」53%,「栄養素の機能と摂取量の目安」43%であり,最も低いのは「家族の献立作成」18%であった。4家庭科学習に対して9割以上が「学んでよかった」と回答し,家庭科学習に対する有用感が高いことが明らかとなった。理由としては,「実生活に役立っている」66%,「他の教科では学べないことが学べた」47%などが挙げられた。5家庭科の教科観(イメージ)を肯定的に捉えている者が多く,「実生活に役立つ」91%,「生活に密着している」90%,「生きていくために重要である」90%,「活動が多くて楽しい」84%などであった。6食意識・食行動,食知識については,肯定的な回答が多く,「加工食品を適切に選べる」81%,「食生活を振り返り,問題点を考える」81%,「食品の管理・保管」80%など,10項目中9項目が50%を超えたが,「五大栄養素について説明できる」は,34%と低かった。7栄養素の働きについては,10点満点中最頻値8,平均値7.0,標準偏差1.99,栄養素を主に含む食品については,8点満点中最頻値5,平均値5.1,標準偏差1.86であった。8調理技能について,「自信がある」が多い順に,スクランブルエッグ65%,野菜炒め59%,ハンバーグ38%,親子丼36%,かつお節からとる出汁26%,だし巻き卵25%,てんぷら22%,ムニエル14%,魚の三枚おろし13%,筑前煮11%,ホワイトソース9%であった。9家庭科履修との関連について,履修者の方が未履修者より有意に高かった項目は次のとおりである。家庭科学習の有用感では,「具体的で分かりやすい」(p<0.05),食意識・食行動,食知識では,「食品の管理・保存」(p<0.01),「食生活を振り返り,問題点を考える」(p<0.01)の2項目,調理技能では,「ハンバーグ」「だし巻き卵」(p<0.001),「スクランブルエッグ」(p<0.01),「野菜炒め」「ムニエル」「筑前煮」(p<0.05)。栄養素の働きでは,「体の調子を整える栄養素」(p<0.01)。10一方,家庭科履修との関連について,未履修者の方が履修者より有意に高かった項目は,家庭科学習の期待感における「会食の食卓作法」(p<0.001)のみであった。<br>〈まとめ〉<br> 特に,履修者に「食生活を振り返り,問題点を考えることができる」と回答する者が有意に多かったことは,家庭科履修の大きな成果である。しかし,五大栄養素の説明を始め,献立学習などが定着していないことが課題として示唆された。家庭科における食育の充実が求められている今日,役立ち感が高く,履修効果の認められる調理学習を中核として,実効ある指導方法を検討していく必要がある。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680572319488
  • NII論文ID
    130006962696
  • DOI
    10.11549/jhee.51.0.90.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ