子育て支援利用の現状と課題

書誌事項

タイトル別名
  • The Present Condition and Issue of Child Care Support
  • Based on the questionnaires for families having preschool children
  • ー幼稚園・保育所に通う子どもをもつ家族を対象とした子育て調査からー

説明

<BR>【研究目的】  近年、さまざまな社会状況の変化によって、家族機能は大きく変化し、家庭内における子育て・家庭教育に影響を及ぼしている。1998年6月30日の中央教育審議会答申「新しい時代を拓く心を育てるために-次世代を育てる心を失う危機-」は、「過保護や過干渉、育児不安の広がりやしつけへの自信の喪失など、今日の家庭における教育の問題は座視できない状況である。」とし、子育て・家庭教育についての具体的な提言を行った。また、いじめや引きこもり、青少年による凶悪な犯罪は子育て力・家庭教育力の低下と結びつけて論じられ、子どもを持つ親たちの不安を増幅させている。生活習慣の形成、性格の形成等の基礎は乳幼児期にあり、この時期の家族・家庭生活の重要性は看過できない。<BR> 一方、少子化、家庭や地域の子育て力の低下に対応して子育て支援の整備が進められている。1994年のエンゼルプランに始まり、次世代育成支援対策推進法、少子化社会対策支援法が制定され、現在では、「子ども・子育て新システム」の検討が行われてる。ファミリーサポートセンターなど、就学前児童を対象とした地域の子育て支援も普及が進んでいるが、孤立した母親の育児不安、虐待などの問題はむしろ増加する傾向がみられ、個々の家族のより細かなニーズを探り、今後の支援を検討することが要求されている。<BR> そこで本研究では、幼稚園・保育所に通う子どもをもつ家族を対象とした質問紙調査の結果を手がかりに、子育て支援利用の現状と課題を探ることを目的とする。<BR>【研究方法】  2009年2月下旬より3月に京都市の保育所40箇所、幼稚園24箇所を通して保護者を対象とした質問紙調査を行った。有効回収数は保育所1,617票、幼稚園2,909票、有効回収率は各々59%、82%である。計4,526票を分析対象とした。主な調査項目は、子どもの生活習慣、塾・習い事、子どもの性格認知、教育期待、家庭教育、子育ての実態、子育て感、子育て観、子育てネットワーク、子育て支援の利用、および中高生時の家庭科の好き嫌い、現在の家庭科の役立ち感である。調査対象となった幼児は3歳児4.6%・4歳児27.8%・5歳児31.7 %・6歳児27.7%、男児50.2%・女児47.1%、保護者(記入者)は母親95.9%・父親2.6%、73.%が30歳代であった。<BR>【研究結果】  得られた結果は以下の5点にまとめることができる。(1)子育て支援を利用したことがない保護者は66.8%であった。利用したことのある保護者の具体的な支援内容(複数回答)は、一時保育703名(15.5%)、子育て講座223名(4.9%)、子育て相談250名(5.5%)、 ファミリーサポート203名(4.5%)、病後児保育62名(1.4%)、ベビーシッター95名(2.1%)、家事サービス29名(0.6%)、その他202名(4.5%)であった。(2)対象となる子どもが男児の方が女児より子育て支援の利用が多かった。また、きょうだい数が少ないほど、保護者の年齢がひくいほど利用する傾向がみられた。祖父母と同居の家族、フルタイムで働く母親は利用していない者が多かった。(3)子育て支援を利用しているグループは、文字や数などの知育、礼儀作法などの躾、家庭内のルール、読み聞かせ、動物園や美術館へ行くなどの情操教育の頻度が高い、また、平均習い事数も多く、家庭教育全般に熱心である。(4)子育て支援を利用しているグループは、子どもの心配ごとを夫以外に相談する頻度が高いが、親や知り合いに子どもを預かってもらう頻度が低い。(5)子育て支援を利用している保護者は、自分の生き方を大切にしたい、子育ては親だけでなく社会全体で行うものであるという考え方に賛同するものが多い。(5)子育て支援を利用している保護者は、子育てに対する不満が高く、満足度が低い。<BR>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680572351488
  • NII論文ID
    130004619237
  • DOI
    10.11549/jhee.54.0.93.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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