体験の振り返りとしてのナラティブの有効性
書誌事項
- タイトル別名
-
- effects of the narrative as reflection in cooking experience
- 中学校の調理実習から
説明
問題と目的<BR>これまで、本研究グループは、保育体験学習では、事前事後も含めたストーリー性のある授業展開をすることが学びの有効性を高めることを指摘し、事前事後の授業内容(妹尾ら,2011;望月ら,2011)、体験の中身(阿部ら,2011;倉持ら,2011)について検討してきた。特に、事後の授業としては、生徒にナラティブを書かせることについての有効性を授業実践の中で精査し(金子ら,2011)、体験を振り返り学びを深める効果があることを確認してきた。本研究では、調理実習を広い意味での体験型学習と捉え、調理実習の事後の授業でナラティブを書かせることについての有効性について検討する。 これまでの私たちの研究からは、生徒がナラティブを書くことによって、自分の体験が時系列的に想起され、それに基づいた振り返りが行われることが分かっている。調理実習においても、ナラティブを書かせることで、実習を時系列的に振り返り、それが「段取り」への気づきになるのではないかと考えた。何度も調理実習を繰り返すことによって、生徒は確実に手順がよくなり、段取りがうまくなっていくという実感を教師はもつものの、家庭科の時間数が少ない中、くり返し調理実習を行うことはなかなか難しくなってきている。学習指導要領には「調理に必要な手順や時間を考えて計画を立てて行い、調理の後始末の仕方や実習後の評価も含めて学習できるようにする」と書かれている。本研究では、こうした学習を成り立たせる一つの手段として、調理実習後にナラティブを書かせることの有効性について検討することを目的とする。<BR>研究方法<BR> 対象:中学1年生1クラス<BR> 手続き:調理実習後すぐに、授業時間中に生徒に実習の感想を書いてもらった。調理実習後の授業で、生徒にナラティブを書いてもらった。<BR> 分析方法:「感想」と「ナラティブ」の両方を5人で読み、キーワードなる言葉を抽出し、カテゴリーを作成する作業を繰り返し行った。<BR>結果と考察<BR>・ナラティブには次のように「段取り」に気づいた記述が見られた。「茶碗蒸し作りが終わったらサンマを小麦粉に付け、焼きました。○○君のサンマも焼きました。○○君はその間、使った食器を洗って片付けていたり、これから使う食器を持って行きました。焼き終わったらサンマを皿に乗せて…」<BR>・感想文では、次のような表現がよく見られた「美味しく作れた」「家でまた機会があったら作ってみたい」<BR>・生徒のナラティブを書いた感想から「調理実習をやったときはすぐに終わった気がしたが、振り返って書いてみるといろいろなことをやったと言うことにびっくりした。~こうして思い返してみると「ここでこうしておけばよかった」と言うことがたくさんあった。次また同じことをやったら同じミスをしないように心がけたいと思う。<BR>・実習時、準備や生徒への注意で忙しく、生徒ひとりひとりの様子をじっくり難しい教師にとって、ナラティブは生徒の学びを把握するのに役立っていた。更に、生徒のナラティブを使って、深い学びに結びつけられる授業展開についても検討したい。
収録刊行物
-
- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
-
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 55 (0), 20-, 2012
日本家庭科教育学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680572409344
-
- NII論文ID
- 130005021468
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可