ふれあい体験と食の学習を関連づけた授業デザイン

書誌事項

タイトル別名
  • lesson design which combines the experience in early childhood education and care and the food learning

説明

<br><br>問題と目的<br><br> 中学校の家庭科では、幼児とのふれあい体験により、幼児への肯定的なイメージが形成されることが実証されている。生徒と幼児とのかかわりが深まったのではないかと思われることの一つに「会話の量」があげられる。交流時の中で一番多く会話が行われているのは、動きのある遊び時より互いが動かず、交流を促進する場面設定ができた時が多い。そこで、ふれあい体験の中に幼児と一緒にお弁当を食べる時間を設定し、その中でどのような会話と学びが成立しているかを考え、設定し、見取ることができるようにした。<br><br> 幼児期の食生活について学ぶことは、健康な体をつくり、その後の良い食習慣を身につける基礎となるとされている。しかし、家族の中に幼児がいる生徒が少ないことから、食べる量や時間をはじめとする特徴を観察することや食習慣を身につけさせる際のかかわり方を、親になるまで学ぶことが少ない。そこで、本研究では、観察や幼児とふれあう以外に、中学生から意図的にかかわりが生じるように、事前に幼児の保護者に苦手な食品をお弁当に入れることを依頼した。それは、苦手な食品の調理の仕方や、好き嫌いの把握及び、食べるように促す保育者の声かけやかかわり方を学べるようにするためである。また、中学校で学んだ栄養学習を生かして、ふれあい体験時に幼児に食事の大切さを伝える事前授業として、「食育レッスン」を生徒が実施できるように準備をした。中学生が事前授業とふれあい体験の場面設定を関連させ、事後授業として生徒の振り返りをナラティブで書かせ、共有するという一連の授業デザインから、中学生にとってどのような体験と学びが得られるのか、その効果を評価することを目的とした。<br><br>研究方法<br><br>ふれ合い体験の流れ:中学生3年生6クラスの生徒が、クラスごとに幼稚園に訪問し、保育者主導による2,3のゲームを行った後、事前授業で準備した食育レッスンを園児に見せた。その後、一緒にお弁当を食べた後、お別れの時間まで遊ぶ体験を行った。<br><br>体験後の授業:訪問後その日のうちに、自分の体験内容のメモ書きと感想を書かせた。次時に体験を物語る「ナラティブ」に1時間取り組ませた後に、「幼児へのかかわり方」の学習を行った後、「幼児の食へのかかわり方」についての授業を行った。授業のはじめに「ナラティブ」を読み返した後に、「食事時に幼児と会話した内容」、「食事の時間に育まれている食習慣」「幼児の苦手な食品とかかわり方」「保育者や友達のかかわり方から学んだこと」「幼児と中学生の食の違い」について各自でまとめさせた後、クラスで共有する授業を設定し、その内容について検討した。6クラスの中から、1クラスを選択して、分析の対象とした。<br><br>結果と考察<br><br>各自が「食事時に幼児と会話した内容」について発表し共有化した。好きなキャラクターや、趣味、習い事、家族の様子等たくさんの内容が発表され、生徒の興味・関心を多いに引きつけたことと共に、現在の幼児が、どのような生活をしているかが見えた。また、食習慣は、集団の中で培われやすいことも理解することができた。幼児にとって苦手な食べ物は野菜が多いこと、その時の幼児の様子、周囲の人のかかわり方についても共有化から、学ぶことができた。注目したいことは、中学生と一緒に食べることにより、嫌いな食べ物を含めて完食した園児が多く、中学生の期待に答えようとする幼児の姿に、ほとんどの生徒の心が動かされていた。<br><br>幼児と一緒に食事をするふれあい体験とその後の授業を通して、中学生は、幼児期の食の意義を理解すると共に、現在の自分の食生活を振り返る機会となった。また、幼児と多くの会話を交わし、自分が他者(幼児)に影響を与えることができる存在あることなどに気づき、効果的な授業となった。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680572487424
  • NII論文ID
    130005485005
  • DOI
    10.11549/jhee.58.0_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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