中学校家族学習のロール・プレイングにおける「人との関係性」の変容に関する質的研究

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タイトル別名
  • Qualitative research about the changes of the relationships among junior high school students with the roleplaying through family education in home economics class.

抄録

目的 <br> 家庭科の家族学習においては、多様な人々とよりよくかかわる力を育んでいくため、「人との関係性」が育成できるような学びの場を提供することが重要である。2008年告示の中学校学習指導要領家庭科においても、「これからの自分と家族とのかかわりに関心を持ち、家族関係をよりよくする方法を考えること」という文言が示され、「人との関係性」の育みは一層重視される傾向にある。<br>  家庭科の家族学習おいては、「人との関係性」を育成するための学習方法の一つとして、ロール・プレイングが行われてきた。しかし、ロール・プレイングについてはその方法論の確立をはじめ、ロール・プレイングの導入・実践により、生徒たちは「人との関係性」についてどのような学びを展開するのかなど、 実践的な研究知見については不十分であるといえる。<br> そこで、ロール・プレイングでの学びの質を高めるための方策として、松村康平(1969)の創始した人間関係学の5つのかかわりの原理を援用し、教師と生徒の共通の学習の指標とした。そしてこのロール・プレイングにより、生徒には人間関係についてどのような気付きが生まれ、自己のあり方に変容が見られるのか、またどのようなプロセスであるのかについて、検討したいと考えた。<br> 以上のことから本研究の目的は、中学校家族学習における質的向上を図ったロール・プレイングの実践を通し、生徒たちはどのようなプロセスで「人との関係性」を変容させるのか明らかにすることである。また、ここでの「人との関係性」とは、自己と他者との間の認識と相互作用における行為と定義づけた。<br>方法 <br> 2011年度~2012年度の2年間、国立C大学附属中学校2年生に在籍する2クラスの生徒を対象とした。家族学習におけるロール・プレイング実践後の生徒の自由記述を全て書き起こし、データとした。ロール・プレイング後の記述は授業内で行い、記述に確保した時間は5分~10分である。このデータをもとに質的研究方法であるM-GTA(木下,2003)を用いて分析を行なった。M-GTAの分析テーマをロール・プレイングによる中学生の「人との関係性」の変容プロセスとした。自由記述の内容について、中学生の視点から「人との関係性」について、意味をもつ部分を抽出、類型化して概念およびカテゴリーを生成し、その関係性を結果図としてまとめた。<br> 結果<br> M-GTAの分析により、中学生の「人との関係性」の変容プロセスについて、一連の図式が導かれた。ここでは、19個の概念と9つのサブカテゴリーを生成し、3つの段階を捉えることができた。中学生はロール・プレイングに取り組むことで「他者になりきり実感する」段階から「自己と他者の客体化」から「無理のないかかわりを見出す」段階に至る過程が見出された。また、「人との関係性」を促進するものは、生徒の<家族への新たなまなざし>であった。このサブカテゴリーは“新たな見え方”という概念から構成されていることから、ロール・プレイングにおいて演じることは重要であるが、それ以上にロール・プレイングを見て感じたことを生徒同士が語り合うということがこれらの気づきを促すということが明らかとなった。<br><br>木下康仁.(2003).概念の生成法 グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践:質的研究への誘い(pp157-  158).東京:弘文堂.<br>松村康平.(1991).人間関係学.東京:関係学研究所.<br>文部省.(2008).中学校学習指導要領解説 技術・家庭編.<br><br> <br><br> 

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680572521856
  • NII論文ID
    130005485046
  • DOI
    10.11549/jhee.58.0_18
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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