観察するプロセスを重視した調理実習教材の検討

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タイトル別名
  • A research on cooking classes' materials focusing on its process of observation

抄録

研究目的<br /> 調理実習は調理に関する技能や知識を実践的に習得することができる重要な機会であるが、作って食べることに終始してしまう危険性もある。そこで学習者の生活へつなげるためには興味を引き出す調理実習が必要であると考える。<br /> Hidi(1990)は、興味を「individual interesting(個人的な興味)」と「text-based interesting(知識についての興味)」に分けて位置づけている。「individual interesting」は個人の特性ともいえ、調理学習にあてはめて考えると、調理に対して主体的な態度をもっている状態であり、「text-based interesting」は環境が提供する知識に対する興味と言える。これまでは、「text-based interesting」の部分を評価して教材が論じられることが多いが、身体的に学ぶことを「楽しい」と感じて興味を持つことにつなげたいと考えた。さらに調理に対する興味を引き出すためには教材が重要な意味を持つことから全員で共有できる「観察する」教材が効果的であると考えた。ただし、これまでの教材についての研究では、学習のプロセスに焦点を当てたものがほとんどない。<br /> そこで、本研究ではHidi(1990)の2つの興味をもとに教材を開発し、調理のプロセスを観察する作業を取り入れた授業について検討した。<br />研究方法<br /> 本研究では、食材の変化が分かりやすく、50分授業で調理が可能なクッキーとジャムを教材とした。授業実践は①事前調査・作り方の説明、②ジャム・クッキーの生地作り、③クッキーを焼く・試食④事後調査・振り返り、である。生徒は食材の変化する様子を観察・記録した。<br /> 公立中学校2年生95名(男子35名 女子60名)を対象として授業前後で行った質問紙調査(調理科学的知識、調理技能に対する認知、調理に関する意欲)の結果や実習で用いたワークシート、振り返りの記述を収集データとし分析を行った。データ収集に際しては事前に生徒に説明し、了承を得て行った。実施時期は2016年6月から7月である。<br />結果と考察<br /> 調理科学的知識の得点は、実習の前後で12点満点中3.41点から8.31点となり、有意に得点が上がった。また、調理技能に対する認知では12項目中3項目、調理に関する意欲については11項目中6項目で有意に平均点が上がり、特に実習後は意欲が高まった。また、事後に調理実習の楽しさについて5段階で評価を求めたところ、平均は4.19となり全体として生徒は実習を楽しいと感じていたことがわかった。<br /> さらに、生徒の振り返りの記述からカテゴリーを生成し、分類を行った。生成されたカテゴリーは「やってみてわかったこと」「調理の手続き」「食材の変化・発見」「意欲」「感想」「その他」である。これらの中で調理のプロセスに関連すると考えられる「やってみてわかったこと」「食材の変化・発見」の2つのカテゴリーに着目し、質問紙調査の結果と併せてみたところ「食材の変化・発見」の記述がある生徒は、記述のない生徒よりも知識得点が高く、「やってみてわかったこと」の記述がある生徒は、記述のない生徒よりも調理実習の楽しさの平均得点が高かった。「やってみてわかったこと」「食材の変化・発見」両方の記述がある生徒は知識得点も高く、実習を楽しいと振り返っていると言える。これらの生徒のワークシートの記述には、次の実習を楽しみとする気持ちや、プロセスに関する記述が多く見られた。つまり、調理に興味を持って学ぶとは、知識が身につく(text-based interesting)だけでなく、楽しんで学ぶこと(individual interesting)であると考えられる。<br />参考文献:Suzanne Hidi(1990). Interest and Its Contribution as a Mental Resource for Learning

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680573076736
  • NII論文ID
    130005966545
  • DOI
    10.11549/jhee.60.0_11
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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