「食」の授業で子どもたちは何を学んだか

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書誌事項

タイトル別名
  • What did students learn from "food education"
  • Based on evaluation of the program
  • -授業後の授業評価からー

抄録

家庭科教育学会課題研究1-1のグループでは、「食に関する教育 ―行動変容を目指した授業の検討―」という課題に取り組んだ。課題研究では、授業において、生徒が自己効力感をもつことが、意識と行動の変容を起こすことになるのではないかという仮説を立てた。 <BR> 本研究は、課題研究の中の授業終了時の自由記述調査を分析し、生徒は「食」の授業を通し、どのような学びを行っているのかを明らかにした。研究対象はさいたま市の中学校2年生142名、記述日は2010年2月である。分析対象の自由記述は、「食」の授業終了時に行った生徒による授業評価において書かれた次の3つの項目である。<BR> A:家庭科の授業の前後で実際に家庭でやったこと<BR> B:家庭科の授業の内容を家族や友だちに話したこと<BR> C:家庭科の授業を受けて考えたり、気がついたり、これからこうしようと思ったこと<BR>  研究対象となった生徒が受けた「食」の授業は、単なる技術を伝達する授業ではなかった。天然だしと化学調味料の比較後の吸い物の実習、加工食品の学習として手作りハンバーグとレトルトや冷凍のハンバーグの比較、身近な清涼飲料水の表示や糖度を調べてから実施した人工ジュースづくり、イワシの手開きから命をいただくことを考えるなど、課題をもった調理実習をおこなった。また、調理実習だけでなく、「なぜひとりで食べるの」という食生活を見直す授業、「チョコレート」から児童労働の実態を知り、フェアトレードについて学ぶ授業、食糧自給率を考える授業も実施した。授業においては授業後の記述や、友だちの意見の批判、討議など生徒の発表の場を多く確保した。<BR> A:家庭科の授業の前後で実際に家庭でやったこと 家庭での実践を課題としていないにもかかわらず、70%近くの生徒が家庭で授業の内容を実践していた。20%の生徒は一度ではなく、複数回実践していた。課題をもった調理実習という体験学習は、生徒に行動する力を与えていたといえる。家族で仲良く調理している家庭もあるが、逆に家族がいないときに自分が作らざるを得なくて作っている記述も見られた。<BR> B:家庭科の授業の内容を家族や友達に話したか  80%を超える生徒が家族に授業の内容を話している。誰かに話すということは、その学びがその生徒に意味があったということである。学びを誰かに語ることでその学びがさらに深まることになる。また、語ることで学びか広がる可能性がある。<BR> CC:家庭科の授業を受けて、考えたり、気がついたり、これからこうしようと思ったこと<BR> ここでの記述で一番多かったのは、食べ物への感謝と、親の大変さへの気づきという心情的な記述であった(37,9% )。心情的な学びは、教師が意図していたことではなかった。生徒が「食」の授業において学んでいたことは、知識や技術だけではなかったのである。授業を受けることによって、心が動いたということは、生徒の生活を変える力の基礎となるのではないかと考える。<BR>  授業において、自己効力感をもつことが、行動変容につながるのではないかという仮説を立て、実際の授業で生徒が何を学んでいるかを生徒の記述から分析してきた。家庭科の「食」の授業において、生徒が学んでいたことは、食べ物への感謝と親の大変さへの気づきであり、家庭科の授業で学んだことを家庭で話し、実際に作っている姿が浮かび上がってきた。感謝したり、行動したりできるということは、授業に有用感や納得感をもったということであり、自己効力感が高まった結果であるといえる。さらに、授業で学んだことを自分の言葉にして家族で語り合ったり、調理をしたりする行動そのものが、さらに自己効力感を高めていくのではないかと考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680573092864
  • NII論文ID
    130006963465
  • DOI
    10.11549/jhee.53.0.80.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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