アサーション行動と家族関係およびハーディネスとの関連

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タイトル別名
  • The relevance among assertion behavior, family relationship and hardiness.

抄録

目的:近年,日本では生きる力の育成をめざした教育が推進されている。変化の激しい社会の中で,心身ともに健康に生活するためには,他者とのコミュニケーションを円滑に行うことが重要である。しかし他者とのコミュニケーションをうまくとることができず,不登校や引きこもりなどの問題が増加している。このような状況の中,コミュニケーション能力の育成を目的とした授業実践が取り組まれている。ところで戦後,民主的な家庭や社会の建設を担う教科となった家庭科では,家庭科新設の当初より家族や友人などの周囲の人との人間関係の形成を課題のひとつとしてきた。しかし高度成長期以来,保護者の就労形態の変化を背景に,家族関係の希薄化が問題として指摘され,家族関係に関する教育の必要性が報告されている。先行研究では,小学生高学年を対象としたアサーショントレーニングを実施し,一定の効果を得たが,対象年齢を広げより効果的な授業計画を立てるためには,アサーション行動に関する特徴について詳細な知見を得ることが必要であると考え研究を行った。まずアサーション行動を促進する要因として家族や友人からのサポーティブな関係を予測した。そしてアサーティブな行動の獲得が家族関係やハーディネスにポジティブな影響をもたらすと考え,家族や友人からのサポーティブな関係,アサーション行動,家族関係およびハーディネスとの関連を検討し,アサーション行動獲得の意義について確認するとともに効果的なトレーニングを計画するうえでの知見を得ることとした。方法:大学生175名(男性81名,平均年齢19.15歳±1.03歳,女性94名19.35歳±1.18歳)を対象にソーシャルサポート,アサーション行動,家族関係,ハーディネスに関する質問紙調査を行った。結果と考察:各尺度の妥当性と信頼性を確認し,相関分析を行ったのちに重回帰分析を行いそれぞれの尺度間の関連について検討したところ,友人からの情動的なソーシャルサポートがアサーション行動の関係形成因子に影響しており,友人から情動的サポートを得られることでアサーティブな行動が促進されることが予測できた。属する集団が情動的にサポーティブな環境であれば,アサーティブな行動が促進されると考えられる。アサーション行動の関係形成因子は,家族関係の凝集表出性に影響を与えており,大学生では友人との関係を通して獲得されると考えられるアサーティブな行動は結果的に家族関係に好ましい影響を与えていると予測できる。さらに家族関係における凝集表出性はハーディネスに影響を与えており,アサーティブな行動の獲得は,周囲との人間関係を円滑にし,ストレス状況下においても健康を維持することができる性格特性であるハーディネスの獲得にも関連していることが示された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680573104512
  • NII論文ID
    130006963481
  • DOI
    10.11549/jhee.53.0.73.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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