生活場面で実践できる力の実態と課題

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書誌事項

タイトル別名
  • The present condition and issues of ability to problem solve in various life situations
  • 前回調査をふまえた調査設計の経過と構想
  • Progress and concept of survey design based on previous survey

抄録

<目的> 家庭科は生活に関する知識・技能を習得し、それらを活用して課題を解決しよりよい生活を創造する実践力を育成することを目的としてきた。本研究は21世紀型能力の要素と構造をふまえ、基礎力、思考力、実践力の定着の状況を見出し、今後の教授学習の内容、方法に対する提言をすることを目的としている。2013年度の実態調査の結果、「出来ていること・出来ていないこと」がある程度明確になったが、調査項目の設定等に関する課題も見出された。そこで、これらの結果や課題を基に、より有効なデータを得るために調査方法等の改善を図った。調査は終了段階であるが、今回は2016年実施の予備調査をふまえて調査の設計過程と構想の報告を行う。<br /><br /><方法> 1)能力論の整理:前研究では、国立教育研究所の21世紀型能力の枠組みを参考に調査設計をしたが、改めて家庭科教育における能力論の整理を行い、調査設計の基盤を明確にした。<br /><br />2)課題整理:能力論に基づき2013年度調査の課題を整理した。<br /><br />3)調査の設計:1)2)を基に、調査内容、分析方法の検討を行った。<br /><br /><結果> 1.調査対象者:中学・高校・大学の1年生とし、修了した各学校段階での生活場面で実践できる力を把握した。<br /><br />2.調査内容の全体構成:中学2年生の生徒の家庭の様子を書いた新聞の投書を読んで、家庭生活に関する5つの問に回答するという構成で、思考を連続させて回答できる問を設定した。<br /><br />3.2013年度調査からの改善点:問1(消費生活・環境)では、インターネットを利用して靴を買う場面を設定した。2013年度調査では情報を読み取る基礎力の把握は出来たが、問題解決に関わる思考力の把握に関する課題が残ったため、設問の表現と回答方法を改善した。また、靴のまとめ買いの問を新設し、実践力を把握できるようにした。問2(食生活)では、家族のために献立を立てて食事をつくる場面を設定した。前調査では食品の栄養的特徴や調理等の基礎力の把握は出来たが、献立内容の決定要因に関わる問題解決過程の記述が不十分といった思考力や実践力の把握に関する課題が残ったため、設問表現と回答方法を改善した。問3(衣生活)では、家族の衣類の洗濯をする場面を設定した。前調査では基礎力(基礎的知識・技能)の把握は出来たが、問題解決の思考のプロセスの記述が不十分といった思考力の把握に関する課題が残ったため、設問の表現と回答方法を改善した。問4(住生活)では、住まい方について考える場面を設定した。前調査では安全の問題については基礎力を中心として把握することが出来たが、さらに住生活上の風通し等の快適性や健康上の課題、家族との関わりやプライバシー等の問題について、その解決策を考えることができるといった問題解決に関する思考力・実践力の把握に関する課題が残ったため、設問の表現と回答方法を改善した。問5(家族・家庭生活)では、家庭の仕事の分担について考える場面を設定した。前調査では、家庭の仕事の理解等の基礎力の把握、家庭の仕事の分担の仕方を考える思考力・実践力の把握が不十分であったこと、また回答方法が複雑で誤記入が多かったことから、設問の内容や表現と回答方法を改善した。<br /><br />4.各設問から読み取ることができる力の検討:それぞれの問は、家庭生活における課題解決のための基礎力、思考力、実践力を読み取ることができるように作成した。問1では情報読解力、消費者トラブルへの対応力、持続可能な未来づくりへの責任と計画的な購買行動を、問2では食生活の知識や技能の基礎力と活用力、家族の一員としての自覚や態度を、問3では衣類の組成や構造の特徴、洗剤や洗濯の知識を活用し実践場面で適切な分類・選択ができる力を、問4では平面図の読み取り、安全で快適な住生活についての問題発見と解決策の提案による基礎力と思考力、実生活での活用力、家族の一員としての自覚や態度を、問5では家庭の仕事の特徴を理解し、家族の置かれた状況や生活行動を踏まえて家庭の仕事の分担・協力について考えることができる力を把握する。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680573558272
  • NII論文ID
    130005966576
  • DOI
    10.11549/jhee.60.0_79
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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