中学校家庭科における論理的思考を育む調理実習指導に関する基礎的研究

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Fundamental Study on Cooking Practice Teaching Fostering Logical Thinking in Junior High School Home Economics Department
  • ハンバーグの調理過程の手順とその理解度に注目して
  • Focusing on the procedure and its understanding of cooking process of hamburger steak

抄録

【研究の背景および目的】家庭科教育における実験・実習は,実践的・体験的な学習活動として重要な学習方法であり,特に調理実習は,生徒の興味・関心も高く,家庭科の代表的なイメージ形成にもつながるほど,学習者にとっても好意的な学習となっている。しかし,調理に必要な知識や技能の基礎・基本を習得する上では,必ずしも有効に機能していない面もある。それゆえ,家庭科として調理過程のプロセスを様々な視点から,多角的・多面的に検討していくことは重要である。さらに,2017(平成29)年3月に公示された新学習指導要領においては,「主体的な学び・対話的学び・深い学び」を実践していくことの重要性が求められている。その上で,論理的思考力を育むことは不可欠である。論理的思考とは,難しいものを単純にし,構造化し相手を納得させたり,どのような思考過程を経てその結論に至ったのかを,誰でも理解できるよう明確に説明でき,現状の原因と結果を踏まえ,理想の状態に持っていくための問題解決・改善策を考えるための思考方法とも言える。そこで本研究では,中学校家庭科における代表的な肉の調理題材であるハンバーグを取り上げ,論理的思考を育む調理実習指導を実践していくことを目指し,中学生の調理過程の手順とその理解度について明らかにすることを目的とする。<br />【方法】研究対象は,道内上川管内T中学校1年生58名(有効回答数:52),調査時期は,2016(平成28)年12月~2017(平成29)年1月であった。冬期休業中の課題として,ハンバーグを未履修である状況で,作り方・工程などを,教科書・インターネット・料理本などを参考にして調べても構わないとした。ただし,参考にした情報をただ書き写すだけでなく,誰が見ても作れるようにできるだけ詳しく記述するよう伝えた。調理過程の分析視点としては,3社の中学校家庭科教科書を参考に,「玉ねぎの下ごしらえ」「ひき肉の性質・成形」「焼き・焼き上がりの確認」に関する合計14項目とした。<br />【結果および考察】「玉ねぎの下ごしらえ」については,「みじん切り」が46名(88.5%),「炒める」が40名(76.9%),「冷ます」が24名(46.2%),3つのキーワードとして記していた。さらに,「炒める」の火加減まで記していたものは11名(21.2%)だけであった。次に,「ひき肉の性質・成形」については,まず,「ひき肉と塩や副材料の混ぜ合わせ方」として,「塩を最初に入れて後で副材料を混ぜる」が4名(7.7%),「塩と副材料を一緒に混ぜる」が34名(65.4%),「塩を入れず副材料のみ混ぜる」が14名(26.9%),「粘り気」が15名(28.8%),4つのキーワードとして記していた。塩と副材料を一緒に混ぜ合わせたり,こねることで粘り気が出てくるというひき肉の特徴があまり書かれていないことが特徴的であった。さらに,「成形」として,「空気を抜く」が19名(36.5%)「小判型」が12名(23.1%),「中心をくぼませる」が21名(40.4%),「厚み」が3名(5.8%),4つのキーワードとして記していた。特に顕著な特徴としては,厚みの記載が極端に少なかったことが挙げられる。厚みによっては,厚過ぎて外は焦げても中にはまだ火が通っていないということも生じてくることが予想される。さらに,「焼き・焼き上がりの確認」については,「両面を焼く」が40名(76.9%),「火を弱めて中まで火を通す」が17名(32.7%),「焼き上がりの確認」が11名(21.2%),3つのキーワードとして記していた。焦げ過ぎないように中までしっかり火を通す火加減の調節や焼き上がりの確認をすることが極端に少ない傾向にあった。今後は,以上の結果をもとに,生徒の調理実習におけるつまずきやすい点や理解していても実践する上で困難を生じやすい点に焦点を当て,それらを生徒自らが気づき,さらには解決方法までを導き出せるような授業開発を行い実践・検証していく予定である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680573576576
  • NII論文ID
    130005966625
  • DOI
    10.11549/jhee.60.0_53
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ