週1時間で実施する調理実習を中心とした題材における工夫と課題

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タイトル別名
  • Devices and tasks in subject matter centered on cooking practice carried out in fifty minutes per week

抄録

<目的><br /><br /> 中学校技術・家庭科(家庭分野)では、生徒の生活経験の不足などの理由から、技能の修得が現在の時間数の中では非常に難しいという指摘が多い。そこで、限られた時間でより効率よく調理実習で体験を伴いながら、知識と技能を修得するための手立てを考えるために、横浜市の中学校家庭科教員へのインタビュー調査、調理実習参観を行い、得られた情報を元に非教員養成学部の学生を対象に調理実習を行って効果を確認した1)。本研究では、中学校の協力を得て、これまでの研究で得られた知見を元に、協力校の家庭科教員と協議をしながら、中学校1年生の食分野の調理実習を中心とした題材を立案し、実践と評価を行うことを目的とした。<br /><br /><方法><br /><br /> 協力校は横浜市立A中学校、1学年約280人7クラスの学校で、調理実習は8班で実施した。家庭科教員は中学校での教員経験30年以上で、1)の研究の時から協力いただいた。第1学年の10月~12月に週1回50分授業で合計11回の題材計画を立案した。この学校では調理実習前に、「B食生活と自立」(1)と(2)の学習を終えている。11回のうち、調理の目的や流れ、環境への配慮、調理実習における危険とその予防法、実習におけるルール、班の役割、全実習内容などを理解するための事前指導を2回、実習を振り返り修得した技能を確認し、これからの応用について考える事後指導を1回、実習前の計画のための時間を2回必要と考え、調理実習は6回とした。実習1は小松菜のごま和え(ゆでる調理の復習)ときゅうりの塩もみ(包丁の使い方確認)、実習2はだし巻き卵(技能テスト)、実習3は野菜スープ(野菜の薄切り技能テスト)、実習4は魚のムニエルとポテトサラダ(生魚の扱い方)、実習5は肉団子のスープ(生肉の扱い方、みじん切り)、実習6はハンバーグ、ゆで野菜サラダ(焼き方、冷凍食品の利用)とした。実習4~6は事前に班で実習計画を立てる時間を取り、前半3回の実習と比較した。また、これらの授業実践を通した生徒の目標達成度を評価するために、第1回目と11回目に生徒の学習意欲、調理技術の上達度の自己評価等についてアンケート調査を行った。回収数は事前アンケート262部、事後アンケート255部であった。<br /><br /><結果・考察><br /><br /> 実習1と3では、個人の包丁技能練習または技能テストと調理実習を同時に行った。実習1では、調理台で両方の作業をしたために、生徒が困惑する様子が見受けられた。実習3では、技能テストの場所を別に設けることで改善されたが、教員が技能テストの監督と、班調理について質問に答える役割を同時に行うことが困難だった。今回の実習はTTで行ったが、教員1人でもできるような準備段階での工夫が必要であった。実習4~6では実習前に調理計画立てを行ったため、班内での話し合いが増え、質問が減り、時間短縮につながった。事前アンケートで調理時間や手順を考えて調理をしている生徒は57.2%であったが、事後では計画を立てて調理することを肯定的に考える生徒が86.7%に増加した。ただし、計画通り進められない班もあり、生徒が改善策を考える時間を作る必要がある。実習4と6では、実習3で生徒全員が、実習5では班の担当の生徒が切って残った分を冷凍した物や、市販の冷凍食品を利用し、時間短縮を図ると共に既習の加工食品の活用と関連付けて考えられるようにした。これらの題材を通して調理をすることに自信があると答えた生徒は40.1%から76.9%に増え、より調理技術を向上させたいと考える生徒が89.8%であったことから、生徒自身の調理技術に対する評価と学習意欲を向上させると考えられる。<br /><br />1)横浜国立大学家政教育学会第28回大会発表「中学校家庭科における調理実習の現状と指導法の検討」2016年8月

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680573578496
  • NII論文ID
    130005966628
  • DOI
    10.11549/jhee.60.0_54
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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