高等学校家庭科における消費者教育に関する授業実践

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書誌事項

タイトル別名
  • Teaching practice on consumer education in senior high school home economics class
  • 階層構造分析法を用いた野菜の購入意識の変化について
  • Changes in awareness on purchase of vegetables detected through Analytic Hierarchy Process Method

抄録

【目的】2012年12月「消費者教育の推進に関する法律」の施行に伴い、高等学校家庭科は環境や文化に配慮した持続可能な社会の実現に向けて、消費者が自主的・主体的に考え、社会参加の中で自らの責務や役割を果たしながら行動していく「消費者市民社会」を目指す消費者教育を担う教科科目としての重要性がさらに増してきている。本校家庭科では、2010年3月に松山市保健所と連携して全校生徒(359人)を対象に「食生活及び食育に関するアンケート」を実施したところ、約46%の生徒が食事作りの手伝いを、「ほとんど又は全く」手伝っていない。また当時の1年生に食物調理技術検定4級を受験させたところ、「30秒間にきゅうりを正確に切った枚数23枚以下」の生徒は約43 %であった。このように、手伝いをしないということは調理技術の低下はもちろん、生活力全体の低下が懸念される。また、同年、全校生徒に嫌いな食べ物を聞いたところ、1番嫌いな食べ物としてトマトやナス等の野菜類を挙げた生徒が29.8%であった。そこで2012年度「消費者教育推進のための調査研究事業」の実施にあたって、本校生徒に不足している野菜類の「生産~加工~販売」を意識した体験実習を取り入れ、階層構造分析法による野菜購入に関する意識調査を行った。翌2013年度に同じ対象生徒に同じ調査を行い、比較検討することによって、野菜の生産や販売に携わる人の気持ちを体験したことによる、高校生の野菜購入に関する意識に及ぼす影響や効果について明らかにすることを目的とした。<br>【方法】2年生で家庭科の科目を選択している生徒24名(女子)を対象に、愛媛県内子町にある、設立当初から食品の安心・安全にこだわった取り組みで有名な、道の駅「内子フレッシュパークからり」で8月に3日間の体験実習を行った。<br>農作業体験実習(生産):1.トマトの収穫・選別2.柿の袋かけ・ぜんまいの仕分け3.きゅうりの収穫・袋詰め・畜産の見学4.ピーマンの収穫・草取り5.桃と梨のキャップ作成・箱作り・出荷<br>加工体験実習:「手打ちうどん」と野菜の天ぷら作り<br>試食販売体験実習:1.フルティカトマト(生)2.トマトジャム3.じゃばらジャム4.もち麦うどん5.パスタソース<br>体験実習参加者(24人)に対して、実習前の2012年7月20日と、実習後約1年経過した2013年7月19日の2回、野菜の購入先として「産直市」と「スーパー」のどちらにウェイトを置くかについて、階層構造分析法による調査を実施した。購入先を決めるための評価基準として、「鮮度」「生産地」「価格」「形」の4つの項目について評定・分析を行った。<br>【結果】階層構造分析法で評定・分析を行った結果、体験実習前後ともに生徒が重視している野菜の評価基準は「鮮度→生産地→価格」の順であり、「形」についてはほとんど重視していないことが明らかになった。しかし体験実習を経験した後の評価では,野菜の鮮度、生産地、価格を重視する割合が増えた。また、総合評価では「スーパー」より「産直市」での野菜の購入のウェイトがさらに高くなり、またスーパーにおいても野菜の鮮度を重視する割合が高くなることが明らかになった。以上の結果から、今までほとんど知らなかった野菜の生産・加工・販売の体験実習を通して、生産者の思いに気づき、野菜への関心が高まったと考えられる。同様に、品物を売るときに品物の品質を第一に考えることは当然であるが、販売体験を通して、販売する人の「笑顔」、「情熱」と品物への「愛情」が重要な要素となることに気づき、自分自身の生活を見つめ直すきっかけとなった。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680574042624
  • NII論文ID
    130005478213
  • DOI
    10.11549/jhee.57.0_75
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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