みそ汁作りを中心とする幼小中交流活動において中学生と幼児はいかに関わるか

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タイトル別名
  • The interactions of junior high school students with young children in exchange activities.

抄録

平成20(2008)年告示の中学校学習指導要領(文部科学省,2008)が,家庭科における子どもとふれ合う活動の必修化を示して以降,中学校家庭科における幼児とのふれ合い体験の実践は,広がりや深まりをみせている。ふれ合い体験の効果としては,幼児への関心が高まり,よりポジティブなイメージを持つようになること等(岡野・伊藤・倉持・金田,2012)や,中学生と幼児がペアで活動することによって,中学生の育児への積極性が増すこと(叶内・倉持,2014)が報告されている。しかし,実際の体験の中身(叶内・倉持,2014)について検討した研究はほとんど見当たらない。本研究の目的は,中学生と幼児の相互作用の多様性を明らかにすることを通して,より効果的な活動の提案に資する基礎的資料を提供することである。<br>方 法 石川県内の大学附属幼稚園,小学校,中学校が連携して,みそ汁作りを中心とした幼小中交流会を実施した。幼稚園年長児2クラス,小学校3年生1クラス,中学校3年生1クラスが参加し,年長児約4名,小学生約2名,中学生約2名から構成されるグループに分かれて活動に取り組んだ。当日の活動は,開会,クリスマスツリー作り(アイスブレイク),みそ汁作り,昼食(弁当交流会),片付け,閉会の順に進められた。ビデオカメラで録画した活動を書き起こし,分析対象とした。ビデオカメラで追跡したグループは,中学生のクラス担任でもある家庭科教諭から得た情報に基づき,幼児と積極的に関わろうとしない男子中学生aがいるAグループ,幼児と積極的に関わろうとする男子中学生bがいるBグループ,幼児と積極的に関わろうとする女子中学生cがいるCグループの3グループとした。各グループに2名もしくは3名の中学生が活動していたが,前述の男子中学生a,男子中学生b,女子中学生cの3名に着目して分析を進める。なお,研究の目的に従い,中学生と小学生との相互作用は分析の対象としない。<br>結果と考察 以下,みそ汁の具をちぎる場面について,中学生と幼児とのやり取りを記述する。Aグループ a:バットの豆腐について小さい声で話している。→幼児3名:反応なし→女子中学生:(aが話している最中に)幼児に豆腐と野菜をちぎるよう声をかける。→a:幼児3名と豆腐をちぎる。無言であり,幼児の顔を見ることもない。→男児:aに何か話しかける。→a:少し笑顔になり返答する。Bグループ b:手を動かして幼児3名に野菜のちぎり方を教える。→幼児3名:白菜をちぎる。→b:白菜1枚をちぎり終えた女児とハイタッチをしようと掌を向ける。→女児:反応しない。→b:幼児に話しかけながら笑顔で見ている。野菜がちぎれた頃,豆腐の乗ったバットを男児に手渡す。→男児:バットを受け取り,豆腐をちぎる。Cグループ c:手を動かして幼児3名(男児・女児d・女児e)に豆腐のちぎり方を教える。女児dの側に行き「やる?一緒に」と声をかける。→幼児3名:豆腐や野菜をちぎる。→c:笑顔で幼児に話しかけている。女児dの側でしゃがんで一緒に豆腐をちぎる。以上から,同一の場所,また同一の時間において,同一の活動に取り組んでいた場合であっても,各々の場において多様な相互作用が同時に展開されていることがわかる。本研究の結果を踏まえ,例えば,幼児との関わりに消極的な生徒もより正確に視野にとらえた上での事前指導や事後指導のあり方を模索することも可能であろう。<br>引用文献<br>・叶内茜・倉持清美 2014 中学校家庭科のふれ合い体験プログラムによる効果の比較:幼児への肯定的意識・育児への積極性と自尊感情尺度から 日本家政学会誌,65,58-63.<br>・文部科学省 2008 中学校学習指導要領 東山書房<br>・岡野雅子・伊藤葉子・倉持清美・金田利子 2012 中・高生の家庭科における「幼児とのふれ合い体験」を含む保育学習の効果:幼児への関心・イメージ・知識・共感的応答性の変化とその関連 日本家政学会誌,63,175-184.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680574089728
  • NII論文ID
    130005478289
  • DOI
    10.11549/jhee.57.0_55
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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