骨盤触診の正確性について
説明
【目的】<BR>治療・評価を行う際、骨盤の触診はアライメントの確認や画像処理において必要不可欠なものである。今回は上前腸骨棘(以下:ASIS)と上後腸骨棘(以下:PSIS)に触診部位を限定し、その正確性について検討した。<BR>【対象と方法】<BR>経験年数を問わず無作為に選択した16名である。尚、被検者は1名とする。<BR><撮影方法><BR>1.被検者は足部の位置を指定した台に安静立位を取る。カメラの高さを一定にし、被検者との距離は4.5mとした。<BR>2.対象者にはASISとPSISの触診を2回行ってもらい、その際2回目はこちらが提示した条件を基に再度行った。<BR>3.被検者の骨盤を単純X-Pおよび3D-CTにて撮影し、基準値となるASISとPSISを特定した。<BR>4.基準値の測定としてASISは、臍中央を通る水平線と臍と左右のASISとを結ぶ線の成す角とし、PSISは殿裂上端を通る水平線と左右のPSISと殿裂上端とを結ぶ線の成す角とする。<BR><データ処理><BR>1.指示前後の測定値を関連2群の差の検定にて統計処理を行い、危険率5%未満を有意水準とした。<BR>2.指示前後の測定値の動態を散布図を用いて傾向を比較した。<BR>【結果】<BR>1.ASIS・PSISともに指示前後の値に有意差は認めなかったが、両方の測定値とも指示後の測定値にばらつきを認め、特にPSISで大きくばらついた。<BR>2.被検者の骨盤の高低に対して測定値が逆転の値を示した者はASISで4名、PSISで5名となりばらつきを生じる要因となった。<BR>【考察】<BR>今回の結果は、ASIS・PSISとも指示後の測定値にばらつきを認めるというものであり、骨盤触診の正確性には疑問を投げ掛ける結果となった。その要因としてASISにおいては、今回は立位での触診であり、縫工筋を収縮させ起始部であるASISを探る事は、筋・腱および脂肪などの皮下軟部組織の存在が測定値のばらつきを生む結果になったと考えられる。またPSISでは、大殿筋を収縮させ『ビーナスのえくぼ』を確認しその起始部に沿ってPSISを触診する予定だったが、PSISは筋膜や靭帯等の組織下に存在するため、部位の特定が困難だったのではないかと考える。また、双方に言えると思うが、触診手技は対象者の臨床経験や基礎知識から各自の方法があり、主観的な要素が非常に強くこちらが提示した統一条件では逆にばらつきを生じさせる結果になったと考える。<BR>今回の研究の反省点として(1)触診は熟練を要するため、条件を提示する際には実技を交え、統一した意識付けが必要であった。(2)再現性という視点からも研究を行う必要性があったと思われる。<BR>【まとめ】<BR>1.ASISとPSISの指示前後の触診の正確性について検討した。<BR>2.指示後の触診において特にPSISの測定値にばらつきを認めた。<BR>3.触診技術の未熟さ,難しさを改めて痛感し、スキルアップの重要性を再認識させられた。
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2005 (0), 33-33, 2005
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680600309760
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- NII論文ID
- 130006983846
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可