褥瘡改善に向けての包括的アプローチ

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  • -褥瘡を招く生活因子の見直しから多角的に関わった2事例-

抄録

【はじめに】<BR>車椅子使用関連での褥瘡発生は臥床時間を延長させる。早期治癒に至らなければ、臥床による2次障害を招く。しかし、褥瘡発生の裏には単に車椅子上の不良肢位だけでなく、離床時間、臥床中の体位、移乗の仕方等、褥瘡を招く生活背景が必ず存在する。今回、褥瘡を招く生活因子の見直しから多角的に関わり、治癒に至った5事例中2事例を報告する<BR> 【事例1】<BR>86歳男性、胸髄梗塞、両下肢不全麻痺、肥満。長谷川11点。仙骨部2~3度褥瘡。普通型車椅子使用。常時仙骨座り。移乗全介助。移乗~着座介助にて衣服の摩擦あり。離床拒否が多く、移乗時の恐怖感と肥満により介助者共に負担増加。ベッド生活を助長。昼夜問わず、仰臥位背上げ姿勢でのテレビ鑑賞及び摂食<BR> 【アプローチ】<BR>1,食事時間を中心に離床時間を統一(7時~9時、12時~15時、17時~19時)。2,アダプトコンチェア及びシーポスクッション併用にて坐骨支持にし、創部を無圧化3,移乗負担、創部摩擦減の目的で移乗ボードによる坐骨支持での移乗とし、着座までの介助方法を統一4,臥床中は事前にベッド高を高め、背上げ姿勢でのテレビ鑑賞を制御。同時に創部に寝具が当たらない体位設定とチェック法を統一<BR> 【事例2】<BR>88歳男性、パーキンソン病、Yahr5。長谷川測定不可。左仙骨部2深度褥瘡。再発を繰り返す。普通型車椅子使用。食事は椅子上。仙骨座位及び左傾き。移乗は中等度介助であるが、介助時の衣服摩擦が目立つ。覚醒状態が悪く、摂食は姿勢崩壊状態の中等介助~全介助。褥瘡治療優先の為臥床時間が長く、昼夜逆転傾向。臥床時は30度側臥位の設定だが、枕の挿入法に不備不統一があり、創部が寝具に触れている状態<BR>【アプローチ】<BR>1,離床時間は事例1と同様。離床中はマイチルト車椅子及びデユオジエルクッションにて仙骨座り及び傾き防止すると共に創部を無圧化2,食事は創と覚醒状態の改善を優先し、本調整車椅子乗車での食事設定とした。3,移乗~着座まで、創部の摩擦を避ける介助法を統一4,臥床時、創部に寝具が当たらない体位設定とチェック法を統一。 なお、1,~4,は実技と写真掲示を併用。早期定着を図った。処置はイソジン、ガーゼ。<BR> 【経過】<BR>2事例とも褥瘡は約1ヶ月で完治。事例1は離床拒否なく、自走行動拡大。積極的に軽作業参加。事例2は昼夜逆転改善され、食事は椅子上で最小介助にて可能。<BR> 【考察】<BR>2事例とも褥瘡改善する為には車椅子上の除圧確保だけでなく、生活全般の見直しが必要であった。創の部位、処置によっても差があると思われるが、褥瘡を有する、他類似3事例に対し、同様の取り組みを行った所、2次障害を併発させる事なく、全て約10日で治癒している。褥瘡発生の裏には不良肢位だけでなく、これを招く生活背景が必ず存在する。故にここを見直すことは単に褥瘡治療に留まらず、個々人の生活改善へと直結していくものと考える

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680600356736
  • NII論文ID
    130006983888
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2008.0.91.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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