視覚的手がかりの有無による姿勢戦略の変化

  • 清水 裕貴
    誠愛リハビリテーション病院 リハビリテーション部
  • 長田 悠路
    誠愛リハビリテーション病院 リハビリテーション部
  • 大田 瑞穂
    誠愛リハビリテーション病院 リハビリテーション部
  • 田邊 紗織
    誠愛リハビリテーション病院 リハビリテーション部

Bibliographic Information

Other Title
  • ~片脚立位動作~

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【はじめに】<BR>  視覚情報を姿勢制御に利用していることは知られており、臨床の場で姿勢や動作の指導に、壁や柱などの目印を使用することがある。本研究では、三次元動作解析装置と床反力計を使用し、片脚立位動作において支持脚方向への視覚的な重心移動手がかりの有無による姿勢戦略の変化を計測した。<BR> 【対象と方法】<BR>  対象は承認された倫理審査に従って、インフォームドコンセントが得られた片脚立位保持が可能な健常成人1名(男性、年齢25歳)。課題は静止立位からの片脚立位動作とし、開始肢位は足部を肩幅に開いた立位、終了肢位は片脚立位とした。重心移動の手がかりとなる視覚的な手がかりとして支持脚前方3m、眼前の高さに直径2cmの注視マーカーを設置した。注視マーカーの注視(以下、Mk)と注視マーカー無し(以下、CR)の2条件で課題を行った。<BR>  三次元動作解析装置(VICON MX12)と床反力計(AMTI社製)を使用して計測し、解析パラーメーターは、支持脚床反力Fx,Fy,Fz、左右COP位置変位、COG位置変位、足関節底背屈モーメント、股関節内外転モーメントとした。(以下 M:モーメント)<BR>  動作開始は静止立位における支持脚床反力Fzの1秒平均値から標準偏差の2倍以上変位した時点、動作終了は動作開始後に左右方向COG速度が0になった時点と定義した。動作開始から非支持脚離床までの両脚支持相(以下 DS相)と動作終了までの単脚支持相(以下 SS相)の2相に分けた。<BR> 【結果】<BR>  片脚立位動作に要した時間は、Mk 2.01秒(DS相0.40秒, SS相1.61秒)、CR 2.47秒(DS相1.00秒, SS相2.47秒)となった。DS相のCOG位置変位はMk(左4.7cm,前0.8cm)、CR:(左7.1cm, 前1.9cm)であった。動作開始後の非支持脚の足関節底屈M最大値はMk:35.5Nm, CR:21.5Nmであった。非支持脚離床時の支持脚床反力は、Mk(Fx=26.5N, Fy=7.9N, Fz=584.0N)とCR(Fx=9.8N, Fy=2.5N, Fz=564.5N)であり、この時の支持脚の股関節外転MはMk: 54.3Nm, CR: 51.4Nm、足関節底屈M Mk: 40.6Nm, CR: 29.9Nmであった。<BR> 【考察】<BR>  DS相におけるCOG位置変位は、MkよりもCRで前方への移動が大きく、Mkではほぼ側方へ移動していた。Mkの動作開始直後に非支持脚COP位置がより前方へ移動し、非支持脚足関節底屈MはCRの約1.4倍となった。この大きな足関節底屈Mは、COGの前方移動の制動として働いたと考えた。また、SS相へと移行する非支持脚離床時においてもMkで支持脚の右方向と前方への床反力がCRよりも大きくなり、支持脚股関節外転Mが動作の側方制動に寄与し、足関節底屈Mは継続してCOGの前方移動を制動していると考えた。MkではDS相における足関節底屈MによるCOGの前後方向の制御がみられ、CRよりも短い位置変位となったことが、結果的に動作時間の短縮につながった一因と思われる。<BR>  今回の結果においては、支持脚前方の視覚的手がかりが前後方向の距離感覚としての情報として利用され、結果的に動作速度の向上に寄与したと考えられる。今後、対象者を増やし視覚情報が与える姿勢戦略の変化について検討していきたい。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680600509056
  • NII Article ID
    130006984047
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2009.0.150.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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