有痛性分裂膝蓋骨に対する理学療法

  • 大堀 洋平
    医療法人 永江医院 リハビリテーション部
  • 濱崎 友香
    医療法人 永江医院 リハビリテーション部

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  • ~膝前面組織の評価・治療の重要性~

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【はじめに】<BR> 今回、有痛性分裂膝蓋骨を呈した症例を担当し、分裂膝蓋骨のメカニカルストレスを機能解剖学的に解釈し、治療を行った。この経験から、膝前面痛に対する局所評価・治療を整理したので、ここに報告する。<BR>【症例紹介】<BR> 10代前半、男性、陸上部(100m/走り幅跳び)。診断名は、左有痛性分裂膝蓋骨。X-P所見は、SaupeIII型(膝蓋骨外側の斜方分裂)。受傷機転は無く、起床時に疼痛出現し、増強傾向のため、1ヶ月後、当院受診となった。主訴は、膝関節屈曲時痛、歩行・階段昇降時痛(膝蓋骨分裂部)であった。<BR>【理学療法開始時評価】<BR> 圧痛は膝蓋骨分裂部にあり、膝関節屈曲110°(疼痛あり)、大腿筋膜張筋・大腿四頭筋(特に外側広筋)のtightnessがみられ、ober test陽性、大殿筋テスト陽性、腸脛靭帯は緊張し滑動性低下していた。<BR>【プログラム】<BR>大腿筋膜張筋・外側広筋・大殿筋反復収縮<BR>腸脛靭帯・膝蓋外側支帯ストレッチ<BR>【経過】<BR> リハビリ開始3週経過にて、Heel Hip Distance(骨盤後傾位)の全可動域可能となった。4週経過にて、ADL可能となり競技復帰を目指していたが、7週経過にて、走行時、膝蓋骨下部に疼痛出現した。<BR>【考察(再評価・追加プログラム・結果含む)】<BR> 本症例の疼痛は、膝蓋骨分裂部へのtraction forceが過度に加わったため、生じたと考える。膝蓋骨外側に付着する、大腿筋膜張筋・外側広筋にtightness、腸脛靭帯・膝蓋外側支帯に緊張、滑走不全がみられた。外側支持組織の緊張は、屈曲時、膝蓋骨分裂部を外側へ折り曲げる力を過度に生み、また歩行立脚期に分裂部への過度なtraction forceを生む。外側支持組織の柔軟性改善により、膝屈曲可動域拡大、歩行・階段昇降時痛は消失した。<BR> しかし、走行時に膝蓋骨下部に疼痛が生じ(6/10点)、外側膝蓋脛骨靭帯・膝蓋靭帯外側・膝蓋骨骨尖外側に圧痛がみられた。膝蓋骨周囲を再評価すると、内側膝蓋脛骨靭帯・膝蓋大腿靭帯の緊張、膝蓋下脂肪体の腫脹がみられた。外側支持組織の緊張による外上方、内側支持組織の緊張による内下方の分力が、膝蓋骨の内上方への動きを過度に作り、traction forceにより膝蓋骨外側下部に疼痛が生じたと考える。内側膝蓋脛骨・膝蓋大腿靭帯ストレッチ、膝蓋下脂肪体のモビライゼーションを加え(計4回施行;週1回)、柔軟性改善を図ると疼痛軽減した(2~3/10点)。その後、走行(全速力)時の疼痛がやや残存したため、insoleを施行した。<BR>【まとめ】<BR> 膝前面痛は、膝蓋骨の適切なtrackingを作る必要がある。膝蓋骨上部だけでなく、膝蓋骨周囲軟部組織の評価・治療が不可欠であると再考できた。この経験を障害の治療・予防に貢献させたいと考える。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680600706304
  • NII Article ID
    130006984190
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2009.0.192.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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