両側慢性硬膜下血腫術後に精神症状を呈した高齢患者の1例

DOI
  • 田口 光
    医療法人博悠会 博悠会温泉病院 リハビリテーション部
  • 大西 芳輝
    医療法人博悠会 博悠会温泉病院 リハビリテーション部

抄録

【はじめに】<BR> 今回,両側慢性硬膜下血腫術後に精神症状を呈した高齢患者の1症例を報告する.なお,本研究はインフォームド・コンセントの元,個人情報保護を含めた倫理的承認を得たものである.<BR>【症例】<BR> 79歳,男性,職業(畜産業).<BR> 現病歴:X年5月交通事故(骨盤骨折に対し保存的加療),6月B病院へ転院(左坐骨・総腓骨神経麻痺にSLB作成).7月11日C病院へ転院(両側慢性硬膜下血腫除去術施行).8月1日B病院へ再入院,8月18日患者希望で自宅へ.8月21日在宅介護困難から当院入院.<BR> 入院時所見:意識レベル清明(HDS-R 24点).MMT中殿筋3.寝返り~端座位自立.立ち上がり~立位保持は手すり等にて可能,歩行はSLBと歩行器にて一部介助レベル(日中は車椅子),排泄はトイレ見守り,その他ADLでは入浴において一部介助.<BR>【治療および経過】<BR> 入院5日目「公衆電話を使えない!」を契機に精神的落ち込み,不定愁訴や不眠,小声となる.リハの希望は高く,筋力増強・歩行器歩行中心に実施するが,「血圧は?」等心気的発言やトイレ動作等への介助要求増加.精査目的でC病院へコンサルテーション(「術後経過は良好、抑うつ状態」).抑うつ状態に対し,患者希望を第一優先と方針を統一. 10月下旬SLB歩行器歩行見守りにて100m程度可能と運動機能向上を認めるも,表情硬く,装具やブレーキ忘れ等危険な場面増加. 11月上旬精神科医へコンサルテーション(「記憶障害の認識は全く無く,抑うつ状態は改善傾向」).その後も時間の見当識不良,妻へ攻撃的な発言,居室内転倒など不安定な為,リハの方針を積極的心理介入とした.また,心理指標の一つとして唾液アミラーゼ活性値(ニプロ社製ココロメーター使用)を測定した.介入後2週間の結果より,安静時唾液アミラーゼ活性高値を確認,リラクゼーションを目標に行動分析を行った所,歩行練習後唾液アミラーゼ活性低値を確認.歩行練習を核に(内的・外的)行動因子を特定し,歩行練習を土台に会話誘導法や混乱誘導法を併用しながら認知行動療法開始.生活歴などキーワードにて自己への気づきを誘導.心理介入と運動療法を同時施行し,12月歩行器歩行から4点杖歩行へ,さらに1月T字杖歩行軽介助~見守りレベルに機能改善.運動機能改善に伴い精神的安定傾向(妻へ労いの言葉をかける場面あり).心身機能安定をうけ,2月在宅復帰となる.<BR>【考察】<BR> 種々の精神症状によりリハビリテーション実施に難渋したが,心理的イベントを契機に心身機能低下を呈したという事実に立ち返り,ストレス耐性の再構築という観点から心理的・身体的介入により,最終的には目標とした在宅復帰に至ったものと考える.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680600760064
  • NII論文ID
    130006984282
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2009.0.16.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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